シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「奴の"処分"は任せて…あたしは、櫂に用なんだ」
俺の顔から笑みは引く。
今度は…なんだ?
「ふふふ。じゃーん!!!
新作のクサ料理!!!
櫂の為に作ったの。食べてね~」
クサ…料理?
「もしかしてそれは…久遠が…」
「そう、久遠が持って来てくれたクサだよ。乾燥すると匂いがとれてしまうから、生で持って来てくれたの。ちょっとぴりっとするから…蜂蜜漬のおひたしにしたんだ。はい、"あーーーん"」
もう…いらない。
俺は自ずと口呼吸に切り換えている。
乾燥させた"あれ"で匂いがマシだというのなら、今此処に在るクサの匂いを、少しでも感じたくない。
「櫂、この"肉"の部分は"しちゅ~"に使ってたの。柔らかくて弾力性あっておいしかったでしょ? 今度は葉の部分だからね」
もう…"しちゅ~"関連はいらない。
断固拒否したい!!!
というか――
"肉"の部分…?
あの…不気味な形した肉と…クサがどう関係あるんだ?
種別が違うじゃないか!!!
お前は一体、俺に何を食わせたいんだ!!!
そんなに俺が嫌いか!!?
そこまで俺が嫌いか!!?
「…せり。そんな涙目で拒否する奴に、何故オレの土産をやる?」
この不機嫌そうな声は…久遠。
「だからそいつよりも、まずオレだろ? せり…。そんな大きいものがオレの口に入るわけないだろ、馬鹿だな…。いいか? 猫は消化悪いものよりも、食べやすいものがいいんだよ!! そのクサ、オレには食べにくいだろ? せりが一度噛んで柔らかくしたものを、オレにくれればいいだろう!! 頭使えよ」
噛んで柔らかく…?
「芹霞、芹霞!!! 僕は堅い物でも何でも大丈夫だから、頂戴? 僕に頂戴? ふふふ、また僕の胡桃あげるね。
…うん。芹霞のはおいしいよ。口に入れても溢れてくるこのとろりとした蜜がまた…おいしいね? 甘くてちょっと苦くて…僕、ずっと味わって…口に含んでいたいよ。
ふふふ、やだな…くすぐったい。そんな処…体が熱くなってきちゃうじゃないか…」
………。
「貸せ、それは全部オレが食う!!! 芹霞が俺の為に作ったんだ!!! お前らには食う権利なしッッ!!!」
そして嫉妬に狂った俺は、また過ちを犯す。
皿らしきものを、奪って…手でそれに盛られたどろどろした"何か"を口に押し詰めた。
「!!!!!」
強烈!!!
口内から拡がる…あまりの臭気と苦さに、げほげほ咽せ込んで、半ば意識は遠のいて。
幸運にも…皿をひっくり返した。
わざとではないし、これは仕方が無い。
「ああ、落ちちゃった。
大丈夫、まだあるからね、はい」
拾った皿に――
また…盛られたようで。
「おいしい? 櫂…どう?」
「ああ…お…い…し…」
「ふふふ、感動に涙? 嬉しいね~。
じゃあ…はいまたお代わり」
またまた…盛られたようで。
『坊ー、マイナス10点』
点数より、芹霞の料理より――
芹霞の愛情が…欲しい。
切に思った。