シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
煌は俺に気遣い、小声で話す。
「櫂、攻撃が入らなかったのは、奴らのパターン外の動きを俺達がしすぎていたからだ。あの"お試し"の初回に、必要以上に"すばやく撹乱させられる"と思い込まされていたようだ。
だけど動きのパターンが判れば何のこともねえ。奴らの動きは早いけれど単純だ。最初焦ったけれど位置が判ればやはり、俺にとっては…」
偃月刀を振り回した気配がすれば、ニャンという声で猫が叩き付けられたのが判った。
「楽勝なんだよ。イロオニでは動かされていたから、此処でも攻撃避けという言葉に惑わされて体を動かしたけれど、此処では…避けるのではなく、ひたすら攻撃だけすればいいらしい」
素早しっこくて攻撃力がある。
そう…思い込まされていたと?
「オラ、玲リス!! ニャンコ相手にしてる隙に、噛み付こうとしているのバレバレなんだよ!! ホラ、お前も、お前も!! 俺の偃月刀にもカリカリしにくるな!! 勿論櫂のもだ!!! 判られたくなければ、息止めて来い!!! つーか、ぶつぶつ呟いてくればモロバレじゃねえか、頭使えよ」
「イタタタ…」
「酷いな…僕達だけ狙い打ちなんて」
「ネコは…あ、不貞腐れて寝てる!! ずるいぞ、参加しろよ!!」
「頭使えなんて…自分のことは棚に上げてさ!!」
「息止めろなんて…なんて非道な駄犬だろう」
「僕なんて足で踏み潰そうとされたぞ? 本当にえげつないよね」
「本当、本当。えげつない駄犬だね」
「うん、えげつない」
「僕も同感だ」
「カリカリしようか」
「カリカリしちゃおうか。おいしくなさそうな犬肉だけれど」
リス達の声の反響に、思わず俺は眼を細めた。
「一斉に喋るな!! 俺の耳はお前らの声や音拾いすぎて、頭ぐらぐらしてんだよ!!
それに、お前達にえげつねえなんて言われたかねえよ!! リアルの玲に…俺何度酷い目にあわせられてるよ!!!
しかもおいしくなさそうって何よ!!? 犬肉って何よ!!?
ああ何も言うな!! 頭ん中、ワンワンするんだって!! ワンワン!!」
煌の声もワンワンする。
ワンワン…。
煌がワンワン…。
――ワンワン、ぎゅう…。
俺は頭を、ぶんぶんと横に振った。