シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「おお、これ…芹霞の大切な赤い宝箱じゃねえか…」


その時、袋を覗き込んでいた煌が感嘆に満ちた声を出した。


「ああ、駄目だよ、神崎の勝手に開けちゃ!!!」


遠坂が、箱に手をかけようとした煌を制した。

「いいんだよ、あいつ…今まで全然見せてくれなかったんだから!!! いっつもいっつも大事そうに意味ありげにこれ覗いて、鍵付きの引き出しに閉まってしまうんだぜ!!? 一度鍵ごと壊して覗こうとしたら、キレた芹霞に髪に火つけられて、その日から飯は大嫌いな…更には生の"人参"だ」


遠い目をした煌。

何だか…記憶ある。


人参握りしめ、腹をけたたましく鳴らせた煌が、泣きそうな顔でマンションに飛びこんできて、玲に縋って飯を食わせて貰っていたことがあった。


「絶対…あの火が原因だと思うんだよな、俺の髪がうねったの…」

「それは違うと思うよ、如月…」


「おし、ということで、開けるの決定!!!」

「待て待て如月!!! 君は何か尤(もっと)もらしい理由を言ってたか!!? ボクが理解してないだけか!!? 他の皆は理由として捉えられたのか!!?」


「櫂、お前も見たいよな!!?」

「紫堂がそんなことするわけないじゃないか!!! 紫堂のせいにしようったって…」



「俺も…見たい」



そう言うと、遠坂だけではなく…何故か煌まで驚いた声を上げた。



俺も…見てみたい気がしたんだ。

俺すら…芹霞は見せてくれなかったから。


「紫堂まで!!? …知らないよ、何が出てきても。ボク、見てないし聞いてないからね!!? 責任持たないからね!!?」


「俺もそれ、見たい!!!」


翠が煌の後から抱きつくようにして、一緒に中身を覗き込んだ。


「よし、じゃあ…全員の…賛同一致ということで…」



「クマ、ウチらに聞かれたか?」

「さあ…? 覚えはないが。青春真っ盛りで可愛いじゃないか、がはははは!!」

「クマ…毛が生えたら、一層おっさんやな…」


ぱかっ。



煌が…蓋を開け、皆で中身を覗き込んだ。

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