シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
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機械的な程、直線の動きをする動物達。


俺達が早く動けば、それに食いついてくる移動の早さが凄まじいのであり、攻撃としての速さが優れているわけではないらしい。


そう…。避けようとした俺達の早さに比例していただけの話で、どこまでも…攻撃パターンは同じなんだ。


どの位置に俺が移動しても、攻撃してくる位置は変わらない。

それが判らなければ、瞬間移動のような特殊の動きにしか思えなかったろう。


避けた分の距離を測っての俺の攻撃は、だからこそ入るわけがなかったんだ。

逆にこちらからの攻撃は、そのパターンを見越せばいいもの。


回避ルートも攻撃ルートも常に一定という…蓋を開けて見れば単純な結果。

目で見えれば直ぐ判るものだった。


見えなかった中、煌は…よく気づいたと思う。

さすがだ。


「ニャアアアン…」

「イテテテテ…」


たかが猫、たかがリス…。

小さな動物達とのお試しの戦闘で、まず崩されたのは、俺の…侮った先入観。

見た目以上の、予想外の素早い動きを見せる動物達に驚き過ぎて、気配を判断すると言うより振り回された俺は、攻撃が入らないこと、そして逆に攻撃を避けきれずに受けてしまったことに対して、少なからず…人間としての矜持を崩したのだろう。


今思えば――

動物達の"特殊性"を先に存分に打ち出した、食えぬ氷皇の…暗示のようなお試しの提案さえ聞き入れねば、何も此処まで猫とリスに苦戦せず、ペナルティーも食らうことなく、このパターンも早々にみつけれたはずで。

氷皇の声1つで惑った俺。

そして、見えぬことで、俺が苦戦しているのは…相手にしているのがただの小動物ではなく、その声音の持ち主である…そう勝手に相手の像をすり替えて、"錯覚"していたのだと思う。


せめてもの…人間としての、最低限の矜持だ。


普段…如何に俺は――

状況判断を五感に頼っているのか。


危惧すべきは氷皇の動きのみ。

直感は元より正しかったというのに。


何故直感を退け、必要以上に恐れていたのか。

心の揺らぎは、事実をねじ曲げる。


しかし五感に頼った結果は、全てが悪いものでもなく。

確りとした五感は、より精神を安定させるものだということを認識させて。


一長一短。

それをよい方に導けるのは、常に俺達の手にかかっている。


俺達の意思1つで利点にも欠点にも変化する事実は、変わらない。


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