シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
五感と心との連携が…
強くなるためには大切だ。
どらかだけでは切り抜けられない。
それを改めて感じさせてくれたことだけ、このゲームには感謝しよう。
動物達に攻撃して得点を稼いでも、氷皇が得点を奪いにやってくる。
点数は…恐らく横ばいだ。
「くっ!!!」
「ちっ!!!」
氷皇の動きこそ、パターンがない。
ランダムだ。
あるとすれば…俺達の位置を正確に把握して、その位置に現われる…そのことだけ。
氷皇にとって、俺達こそがパターン化して目に映っているのではないか…そんな気さえしてくる。
動きは的確。攻撃は、足1本だというのに派手な破壊力。
家の崩壊が凄まじい。
撤回されたのはペナルティーであり、減点ではないだけ助かったといえる。
そして防御。
防御を禁じられたままなのに、無意識に、本能的に身構えてしまう俺達。
防御姿勢というのは、避けきることが出来ない時に自ずと出て来るものであれば…俺達は氷皇の動きを見切れるまでのレベルではなく、避けられないんだ。
自然にとってしまう防御。
過去、土下座した俺の頭を足で沈めた、氷皇の記憶が蘇る。
煌だって、過去…腕の骨をやられた。
――あははは~。
笑いながら。
対戦したときの衝撃、緊張感を思い出す。
氷皇が緋狭さんと戦った時、ただただその力に圧倒されたのを思い出す。
それでも俺達が垣間見た氷皇の力は…片鱗。
冷酷な青。
足1本で成り上がった氷皇。
しかしこれは偽者だ。
感じる恐怖は…
氷皇の異名と過去の記憶に拠るものだけだ。
偽りになど負けるものか。
過去の記憶に負けるものか。
これは自分との戦いでもある。
妄執に…囚われてはいけない。
避けきれぬなら、防御をとってしまうなら…
その前に――攻撃を。
攻撃こそが、最大の防御。
それに思い至ったのは、煌とほぼ同時だったろう。
俺達は同時に顔を見合わせて、頷いた。
煌は上へ、俺は下へ。
俺達は武器を振りかざして、氷皇に切りつける。
しかし寸前でその姿は消え、俺達の体に痛みが走る。
簡単にはいかないらしい。
「ちくしょう…緋狭姉みたいな速さして!!!」
巨大な偃月刀が――
「速さにこの重さが対抗出来ないのなら!!!」
形状を変えたんだ。
「速さについていける武器に変えるまで!!!」
蛇矛(だぼう)。
三国志における張飛が愛用した――
蛇を思わせる…波打ったような刀を持つ矛に。