シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「へえ…また変えたんだ、ワンワン。また派手なのに…」
「派手だろうが何だろうが、うるせえんだよ!!! 刃が細身の方が素早さ増すし、曲線の方がダメージ与えられるだろ!!!」
それは…多分本能だろう。
「櫂、何笑うよ…」
「いや…お前の偃月刀、三国志の関羽の武器を模したものだった。次に張飛だというのなら…この次に顕現させるのは、劉備(りゅうび)の"雌雄一対(しゆういっつい)の剣"か…」
「あ? 何呪文唱えてるよ!!?」
「いや、判らないならいい。いいが…本当にお前は面白い」
俺の幼馴染の素質は素晴らしい。
判っていないのは…本人だけだ。
矛術も即座に使える幼馴染。
速度を増して、蛇の様な刃が氷皇を捉えようと走る。
攻撃だけだった氷皇が…避け始めた。
「くっそ!!! 絶対あててやる!!!」
さすがは緋狭さんが見込んだ愛弟子だ。
例え氷皇の偽者とはいえ…"逃げ"させているのは一歩前進。
「俺も負けていられないッッ!!!
――はっ!!!」
弧を描く刃先。
片足を軸に、剣を振る。
「櫂、お前の専門…剣じゃねえだろ。いつ剣やってたよ!!! 鍛錬してねえのに、何でそんなに剣使えるよ!!」
「2ヶ月前、延期された御子神祭の時、お前と剣舞したじゃないか」
「あれは舞だろ!!? ああ…何で櫂は何でも出来ちまうんだよ…」
「それは俺の台詞だろ?」
「あああ!!? もう…自信無くすわ、俺…」
「それも俺の台詞。さあ…行くぞ、煌!!!」
剣舞と矛舞のコラボ。
俺の死角は煌がフォローし、その逆もまた然り。
五感を超えて、直感を超えて。
俺と煌は1つで戦う。
五感と直感。
あれだけ噛み合わなかった俺の肉体が、煌の波長に統一される。
いや、俺の波長に…煌が統一したのか。
一種のトランス状態。
明晰夢の中での無敵な感覚。
無敵と思えるのは…きっと煌の存在だ。
この世界で唯一の真実は、俺と煌。
煌が共に戦ってくれて――
何を恐れることがあるだろう。
俺は…1人ではない。
切り付ける。
突きつける。
叩きつける。
情け無用。
相手は偽りの存在だ。