シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「これ…?」


煌が取り上げたのは古い腕時計。


「見覚えあるな、この時計…ええと、写真? これ…」


そして煌は唇を噛んで、横を向いて目を伏せた。


「初給料でやったもの…こんなトコに入れておくなよ、阿呆タレ」


切なくなるような…煌の声。


そして聞こえてきたんだ、独り言のような呟きが。


「残酷だよ…お前…」



俺もまた…

共鳴するように心が痛んだ。



――あたしも、玲くんが好きです!!



どんなに…大事に思われていても、

芹霞が…自分を選んでいないのが現実。


大事にされればされる程、

その思い出が強い程、

選ばれなかったダメージは大きい。


判るんだ、俺は煌の気持ちが。


煌は――

俺に遠慮して動かないだけだ。


或いは――

8年前を引き摺っているのか。


煌だって…

いや煌ならば。


あの場面で俺以上に暴れていてもおかしくなかった。


俺の世話なんかして…

元気よく振る舞ってはいるけれど…



お前だって――

泣いているんだろ、煌…。


だからこそ…

俺は余計、煌を連れて行きたかった。


裏世界。

それがどんな過酷の道であろうとも。


俺が煌という存在を必要としているように、

煌もきっと…

俺という存在を必要としているように…そう思えたから。

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