シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
裏にある"真意"が読めないまま、入ったコンビニには、ようやく瞬間接着剤が1つだけあって。
芹霞さんの喜ぶ姿を想像しながら、とりあえず一刻も早く戻り、玲様が目覚められたら相談してみようと思った。
能面のように無表情の店員の襟元にはバッチ。
九曜紋…黄幡会の象徴だ。
裏に控えるのはまた違う自警団。
携帯を片手に私の写メを撮って照合していたみたいだが、すぐにそれをやめた。
私の情報が出回っていた為だとしたら、少なくともそれはブラックリストではないのだろう。
もしくは、黄幡会が特別視する皇城家縁の者とでも記載されているのか。
自警団の動きを封じるものがあるとすれば、あの携帯の中に入っているデータだ。
何処のデータに繋がっているのか判らないけれど、そのデータに基づいて自警団が動いているのであれば、そのデータさえ判れば、"意思"が見えてくるのかもしれない。
データを覘くことが出来るのは、玲様や遠坂由香くらいしかいない。
玲様のメインコンピュータが復活し、玲様がいつものように機械を使うことが出来れば、そのデータに繋ぐことも可能ではないか。
早く、動かす為の電力が回復することを祈るばかりだ。
自動ドアを開けて、左に曲った時だった。
「団長」
待ち兼ねていたかのようなその声に、私は足を止めた。
その呼称を私に使用する者は限られているし、その声は聞き覚えがある。
副団長――
二科宮都(にしなみやと)。
振り返れば案の定、童顔の副団長。
小柄で童顔、一見10代にも思えるが…齢は30歳近いはず。
かつて、櫂様を中心とした私達に対する追っ手の頭であり、櫂様が横須賀にて倒られた後、顔を見てはいなかった。
紫堂の命に従って櫂様を追い込みながら、心内では是としなかった彼は、私たちの逃走時間を設けてくれたこともある。
警護団は櫂様の信奉者の集まりなのだと実感させられた…そういう経緯はあるけれど。
「何で…此処に? 紫堂本家に…何故いなかった!!?」
――団長。副団長はいなかったんです。
百合絵さんは、七瀬紫茉宅でそう言っていた。
警護団の宿舎も全てもぬけの殻であったと。