シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「ねえ、おに~たん。おうたうたお?」
子供はきゃっきゃと笑いながら、ぽてぽてと…ウサギ足で私に近付いた。
「かごめかごめ、うたお?」
そして子供は1人で勝手に歌い始めた。
♪か~ごめかごめ、か~ごの中のとりは~
いついつ出やる~。
ぴきん。
私の全身に警戒が走った。
この声――
この歌声は。
木場で、初めて情報屋に会った時、聞こえてきた篭目の歌。
子供は笑いながら歌い続ける。
おかしくはないか。
何でこんな場所に、自警団も屯(たむろ)する中、こんな子供が1人歩けている?
見渡せば袋小路。
唯一の道には子供。
罠か!!!?
「!!!?」
警戒が遅すぎた。
防御を取るのが遅すぎた。
身体が、動かないんだ。
金縛りのように。
それを満足そうに見ながら、子供はまだ歌い続ける。
この歌声が――
私の動きを制しているのか!!?
♪うしろの正面、だ~れ?
歌い終わると同時に――
「団長。悪く思わないで下さい」
「ぐ!!!?」
背後から副団長の腕が、私の首に回った。
私は見たんだ。
彼の手が握っているのは、金色に輝く石。
金塊のような派手な輝きをもたらす石。
「これはね…私の守護石。金鉄鉱(パイライト)です。金ではなく、鉄と硫黄が成分なんだとか」
何で…副団長が守護石を?
守護石を持てるのは――
「ああ、私もあるんですよ、守護石。団長は今まで、私のことなど気にもなさっていないようでしたが」
そしてそれは形状を変える。
「そして…守護石を顕現できるのは、団長だけではありません」
長い長い針に。
団長及び同格の煌しか武器に変化出来ないはずなのに、何故顕現出来るんだ!!?
腕に力を入れられ、首を締め上げられる。
いつもなら簡単に逃れられるはずなのに、身体が動けない為に振り解けられない。
「まあ…団長は若いから"知らない"んでしょうけど、私も伊達に…長く副団長してたわけではないんで。ああ一応私…昔、貴方のお父様の相棒だったんですよ」
そしてその針は――
「残念ですね、団長。貴方は…"資格"があったのに」
「!!!!」
私の耳にずぷりと突き刺さった。