シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「……ごめんね、ごめんね玲くん…」
時間と共に、麗しのお顔がますます膨れているように思うのは、気のせいだろうか。
表情も何だか辛そうだ。
無意識に頬を摩っている時がある。
頬にタオルを置いて冷やそうとしても、嫌がられてしまった。
そんな中で、口に異物突っ込んで歯をくっつけるのは…あまりにも玲くんが可哀想で忍びない。
とにかくこの腫れをなんとかしなきゃ。
鎮痛&消炎!!!
hurry up!!
あたしは、クーラーボックスから氷を取出し、それを数個両手に乗せて玲くんのベッドまで運んだ。
玲くんのお口に入れようとしたら…玲くんの腫れたお口はそこまで開かないらしい。
「ん……」
またもや嫌がられて顔を背けられた。
どうしよう、この氷…どうやって小さくしよう。
桜ちゃんは握力で小さく砕いていたけれど、あたしにはそんな力はない。
だとすれば溶かすしかないか。
その方法を考えた。
流石に…あたしの口に入れたものを玲くんのお口に入れ直すなんていう卑猥なことは出来ない。
あたしだって花も恥じらう、17歳の乙女だ。
無理。
手で温めようか。
それ以外の方法は思いつかないから、手に氷を乗せたままぎゅっと握った。
「!!! ちみて、ちみて!!!」
思った以上に冷たくて、あたしはベッドの傍らで飛び跳ねた。
同時にその氷も手から飛び跳ねて、首で眠るクオンの毛の中に埋まった。
するとクオンはフギーと毛を逆立てて目覚め、尻尾であたしの顔を容赦なく連続攻撃。
その動きで、今度はクオンの毛の中にある氷があたしの胸元に飛んで来て、そのまま服の中にするりと入ってしまった。
「うきゃああああ」
冷たい、冷たい、冷たい。
取ろうとすればする程、氷はするすると下に落ちていき、冷たさと共にくすぐったさも生じて。
「いひひひひひ」
何とも言えない変な笑いが起きた。