シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
とにかく、氷を取出さねば。
服の上からまさぐる。
「よし、あった!!! 此処だ!!!」
…お腹の上で止っていたのは、くの字の姿勢によるものと考えたい。
決して…太った腹の肉に収まったわけではないと、信じたい。
ごそごそと取出した氷。
「あ!!!」
つるんと滑り、今度は…
「ん~…」
何と、玲くんの首元へ。
玲くんが身動ぎしたことで、玲くんも…更に奥に氷が入ってしまったようだ。
慌ててあたしはその氷を取出そうと玲くんの体をまさぐった。
「……ぁ…っ…」
………。
「ん……っ…」
………。
「は……ぁ…んっ…」
………。
玲くんを触れば触る程…目くるめく…官能の世界。
びくりびくりと玲くんは動く。
………。
誓って、あたしには疚(やま)しい心は無い。
疚しい動きもしていない。
だけど何だろう…この悩ましげな生き物は。
何で氷の移動で…そんな声が出て、そんな動きになって、そんな空気になるのか…お子ちゃまには判らない。
氷に悶える…ぷっくりの白い王子様。
息も絶え絶えといった弱い呼吸で、冷たい魔の手から逃れるように、身を捩りながらもぞもぞ動く。
乱れた服から覗く…赤く染まった白肌。
絶え間なく…色気をばんばんに放ち、見ているだけのあたしの咽喉が渇いてくる。
否、咽喉より鼻がむずむずしてくる。
やばい!!!
来る、鼻から"あれ"が来る!!!
凄い勢いでのぼってきたッッ!!!
吹き出る前に鼻を手で押さえ、対策に思考を巡らす。
「ティッシュ!!! 鼻にふさふさつけないと!!!」
しかしこの部屋、ティッシュというものが見当たらない。
ふさふさ…。
鼻にふさふさ…。
早く血を止める準備を。
もぞ…っ。
突如首で動いたそれ。
紅紫色の瞳と視線がぶつかった。