シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「敵の気配がないのに大量の血。………。……。まて、百合絵さん!! なんだか…見えてきたぞ、また神崎が変な妄想して…クオンに吹きかけたんだな」
すまぬ、由香ちゃん。
その通りだ。
「ということは…それ相応のことが起きているのを邪魔しちゃ駄目だ!! 師匠の幸せを邪魔しては~ッッ!!!」
ぷふ~。
何の音だろう?
「…玲坊ちゃまの幸せは邪魔しません。
では私は、この赤い猫を洗濯機に…。……。一応…手洗いがいいですね。漂白剤に浸したい処ですが、縮れ毛になりそうなので、ここはタワシでごしごし…。思い切りこすれば…きっと血色はとれ、純白の毛の復活…。後はきつく絞って、ぱんぱんと思い切りよく伸ばし…ベランダに干して乾かせば…」
「フギーッッ!!!」
「わわわ、クオン!!! 百合絵さんの腹を引っかくなッッ!!! 噛み付くなッッ!! 君は食事をしたばかりだろう!!! それは分厚いステーキじゃないッッ」
すまぬ、百合絵さん。
「……躾が必要ですね」
ボキボキボキ。
…何の音?
「フギャーッッ!!!」
断絶魔のようなクオンの叫び声。
ドッスーンッッ!!
マンションが大きく揺れた。
何が起きているのか判らない。
覗いて見る勇気もない。
家の中は…妙に静まり返っていて。
やがて――
どすどすどす…。
「クオン…お気の毒…」
由香ちゃんのぼやきが聞こえた。
何が起きたのか本当に判らないけれど。
重ね重ね…
すまぬ、クオン。