シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
何とか"枯れせりか"は回避、同時に玲くんの頑固なカビより強敵な…妄想内ネガティブ思考断絶に成功出来た。
充実感と安堵感にほっと息をついた時、あたしは強制的に夢の住人にされた先刻までの会話を思い返し、今更だけど…今度はムカムカしてきてしまった。
そんな時に…タイミングいいのか悪いのか、
「………。ねえ…夢じゃないのなら、僕…変なこと口走ってなかった?」
玲くんのもごもご。
「それは…あたしが"玲くんを幸せにする"と言ったことに対して、格好良くて惚れ直しちゃったと言ったことでしょうか? それとも…あたしが軽蔑すると思って言えなかった、彼女サン達及びお子様についての内容でしょうか? はたまた、あたしがどんなにどんなに玲くん大好きだよ、傍に居るよと言っても、夢だ夢だと聞き入れてくれなかったことについてでしょうか」
玲くんは…両手で顔を覆った。
その時小声で…"痛っ"という言葉が聞こえたけれど。
「全部夢じゃ…「現実だと何度も何度も申し上げました。ええ、もうそれはそれは何度も!!」
玲くんは…覆った指の隙間から…ちらりとあたしを見て。
「……僕のこと、気持ち悪…「気持ち悪くもないし、最低でもないし、軽蔑もしていないと申し上げました。避けるつもりもなければ逃げるつもりもなければ、離れるつもりもないと、はっきりはっきり申し上げたのですが!!!」
「………。芹霞…なんか怒ってない…?」
そしてあたしは玲くん並に、頬を膨らませて言った。
「だって玲くん、全然あたしの話聞いてくれないんだもの!! 違うよって言ってるのに、1人で勝手に思い込んで勘違いして自己完結して。あたし、悲しかったよ!!! 悲しい悲しいって言ってる玲くんより、数倍虚しくて悲しかったよ!! もっとあたしに聞こうよ、思い込まないで!!」
これくらい、言わないと。
「………」
玲くんは…恐る恐ると顔から手を離して、あたしを見て。
「……なんか僕…その気持ちがよく判る。つい最近、そんな気持ち強く味わった気がする…」
そのもごもごがよく聞こえなくて、僅かに首を傾げたら。
ぷすっ。
玲くんの人差し指が、膨らませたままのあたしのほっぺに突き刺さった。
ぷすっ。
「な、何?」
「いや…何かね、そのほっぺ…可愛くて。つい…」
ぷすっ。
可愛いのは玲くんのほっぺ…とは言えない。
あたしもぷっくり玲くんに、ぷすっとしてみたいが…流石にそれは出来ない。
玲くん…あたしにぷすぷすしているのが面白いらしく、楽しそうだ。笑う度に顔を顰(しか)めるけれど。
まあ…愉快な気分ならいい。
このほっぺも報われる。