シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「ねえ…芹霞」
途端に…笑いを止めた玲くんがあたしに、強張った顔を向けて…強張りすぎた頬が痛かったのか、片方の手を頬に添えながら言った。
「僕…まだ彼氏サンでも…いいのかな」
切なくなるくらいの…揺れた眼差しで。
玲くんは緊張した声音を出した。
何だか聞いているあたしまで緊張してくる。
「勿論。玲くんはあたしの、か、か、か…」
「…痰でもからんだ?」
「違いますッッ!! あたしは爺ちゃん婆ちゃんじゃないよッッ!!
あたしは"彼氏サン"と言おうと…彼氏サン…」
言いながら…照れてしまった。
やはりまだ慣れない。
"お試し"なら此処まで照れ照れしなかったのに。
「……僕が――…
夢だと思って君から聞いたこと、
現実、なんだね?」
確かめるようにゆっくりと。
もごもごと玲くんは言った。
「現実だよ。覚えていてくれてよかったよ」
即答してあたしは笑う。
玲くんは何か言いたげに口を動かそうとして、頬を手で押さえ…代わりに何かを目で訴えてきたけれど。
何だろうと鳶色の瞳を見つめていたら、少し苦しそうに目を細めて。
あたし、何か悪いこと言ったかな?
心配になって玲くんに手を伸すと…玲くんはその手を掴んだ。
そして…そろそろと、その指先が動く。
まるで触れることに躊躇(ためら)っているかのように、もどかしい動きをしていたそれは、玲くんの…震えるように吐かれた溜息が終わると共に、今度は対照的に力強い動きを見せて。
玲くんの白くて長い指が、あたしの指に絡みつき…まるで定位置のように、指と指の谷間に、玲くんの指が収まった。
そしてそのままの形で強くぎゅっと握ると、玲くんは繋いだ手ごと…熱くて膨らんだ頬に持って行き、頬ですりすりした。
……少し顔を歪めたのは、痛かったからに違いない。