シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


ああ…玲くんは。

厳しい状況に立ち向かう決意をしたのだと、あたしは思った。


あたし達は玲くんを連れて逃げてきたけれど…玲くんは戦う覚悟をしている。

このまま逃げて暮らす気は…ないんだね?


「君まで…僕の事情に巻き込んでしまうことは…凄く辛いけれど…。だけど…僕は君を守るから。利用させない。哀しませることはしない。


僕は狂わない。君を狂わせない。

何としてでも、僕は…強くなって君を守る。

だから…

僕を信じて…傍に居て下さい」


それを…あたしは頼もしく思った。

流石だと思った。


やっぱり、玲くんだ。


玲くんは崩れるものか。

当主の思い通りになるものか。


そんなこと…

第一あたしが、させないもの!!


「玲くん、信じるよ。あたしにとっての玲くんは、何処までもいつもの玲くんだから。

例えこの先も、当主が何を言っても、あたしは揺るがない。玲くん、あたしは守られるより…一緒に戦っていきたいよ。あたしも強くなって、玲くんを守りたい。


一緒に頑張ろう!!

これからもよろしくね、玲くん」


そう笑った。


「一緒に戦うんだから…

命を捨てることだけはやめてね。


死なれたらあたし…

それこそ気が狂うから」


笑いを消してそう言ったあたしに、玲くんの唇が僅かに震えて。


「か、彼女サンを残して…

逝かにゃいでくだしゃい」



………。


しまった。

いい処で…噛んじゃった…!!


しかし玲くんは気づいていなかったようで。

いや、気づいても…不問にしてくれたようで。


「夢じゃなくて…よかった…」


そう…目を瞑って呟くと、乱した呼吸を繰り返した。


「…好きだよ、芹霞」


斜めから寄越されるその目は、熱っぽく揺らめいて。


「本当に好きなんだ。

溜まらなく好きだよ…。

言っても言っても…足りないほど好きが溢れてる。

ああ…もどかしくて、口が動かないほど…」


………。


流し目まで寄越してくれて…熱烈な言葉をくれる玲くん。


口が動かないのは…頬が腫れているせいだとは気づいていないらしい。


それでも、一生懸命もごもご口を動かす玲くんは、…ああ、頬袋膨らませて、どんぐりとか胡桃をカジカジしているリスみたいだ。


ふふふ、可愛いなあ…。

和むなあ…。

< 408 / 1,366 >

この作品をシェア

pagetop