シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
ああ…玲くんは。
厳しい状況に立ち向かう決意をしたのだと、あたしは思った。
あたし達は玲くんを連れて逃げてきたけれど…玲くんは戦う覚悟をしている。
このまま逃げて暮らす気は…ないんだね?
「君まで…僕の事情に巻き込んでしまうことは…凄く辛いけれど…。だけど…僕は君を守るから。利用させない。哀しませることはしない。
僕は狂わない。君を狂わせない。
何としてでも、僕は…強くなって君を守る。
だから…
僕を信じて…傍に居て下さい」
それを…あたしは頼もしく思った。
流石だと思った。
やっぱり、玲くんだ。
玲くんは崩れるものか。
当主の思い通りになるものか。
そんなこと…
第一あたしが、させないもの!!
「玲くん、信じるよ。あたしにとっての玲くんは、何処までもいつもの玲くんだから。
例えこの先も、当主が何を言っても、あたしは揺るがない。玲くん、あたしは守られるより…一緒に戦っていきたいよ。あたしも強くなって、玲くんを守りたい。
一緒に頑張ろう!!
これからもよろしくね、玲くん」
そう笑った。
「一緒に戦うんだから…
命を捨てることだけはやめてね。
死なれたらあたし…
それこそ気が狂うから」
笑いを消してそう言ったあたしに、玲くんの唇が僅かに震えて。
「か、彼女サンを残して…
逝かにゃいでくだしゃい」
………。
しまった。
いい処で…噛んじゃった…!!
しかし玲くんは気づいていなかったようで。
いや、気づいても…不問にしてくれたようで。
「夢じゃなくて…よかった…」
そう…目を瞑って呟くと、乱した呼吸を繰り返した。
「…好きだよ、芹霞」
斜めから寄越されるその目は、熱っぽく揺らめいて。
「本当に好きなんだ。
溜まらなく好きだよ…。
言っても言っても…足りないほど好きが溢れてる。
ああ…もどかしくて、口が動かないほど…」
………。
流し目まで寄越してくれて…熱烈な言葉をくれる玲くん。
口が動かないのは…頬が腫れているせいだとは気づいていないらしい。
それでも、一生懸命もごもご口を動かす玲くんは、…ああ、頬袋膨らませて、どんぐりとか胡桃をカジカジしているリスみたいだ。
ふふふ、可愛いなあ…。
和むなあ…。