シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「クオン…?」
玲くんは何か考えているようで。
「ああ、あの久遠とそっくりなんだ、我儘ぶりが。だから名前はクオン。本人もクオンがいいみたいで。だけどあの久遠じゃないよ、あの久遠はちゃんと生きてるし」
「……。………。
猫になって、邪魔しに来たとか…?」
何だか舌打ちの音がしたと思ったら、玲くんがまた頬に手を添えて、ふるふる震えていて。
「何で…こんなに頬が痛いんだろう…しかも両側…」
やばい。
玲くん…核心に近付いてきている。
由香ちゃんはまだむふふで、紫茉ちゃんもまだひいひいだし、そして――
「「………」」
あたしと玲くんは、
クオンを見て黙り込んだ。
「………」
「……ねえ、芹霞…」
「………」
「……芹霞…?」
「………あ。はい?」
「……今、この猫…」
もごもご玲くんはクオンを指をさして。
「笑ったよね、僕の顔見て」
「……キノセイダヨ…」
ぷっくり玲くんの顔を見た途端、クオンの目は糸のように細くなり…口を大きく開いて歯を剥き出しにした。
その様は…確かに…笑った、ような気がする。
「「………」」
あ、また…。
「「………」」
よせ、クオン。
お前何をしているんだ?
何でいつも通りツンとすましていない?
どうしてそんなに判りやすい、あからさまにおかしな顔をする?
お前は美猫じゃないのか?
それなら化け猫だぞ?
あたしに対する報復か!!?
追い詰める気か!!?
しかしそんなことしたって、そういう悪い猫には――
どすどすどす…。
重く移動してくる音に、クオンは飛び上がって。
「え…百合絵さんもいるの?」
玲くんは…音だけで判るらしい。
「玲坊ちゃまの幸せの邪魔するか、猫め~ッッ!!!」
お怒りになる百合絵さんが部屋に現われ、
「フギャーッッ!!!」
クオンは、思い切り高く飛び跳ねた。
玲くんの…ぷっくり頬を後ろ足で蹴飛ばして。
「~~~ッッ!!!」
玲くん…。
猫パンチに引き続き…
猫キックにも撃沈…。
◇◇◇
《UpperWorld 004》