シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
そんな危惧と同時に――
ちょっとしたことで痛い僕の頬。
熱をもって腫れている。
明らかに…何か炎症を起こしている。
しかも表皮がひりひりする。
包帯で手当てされた手の傷も痛いけれど、頬に比べたら全然可愛いモノで。
喋っても痛い、動かしても痛い。
それでも我慢して、僕は芹霞に想いを告げ続けてきたんだけれど。
人間の女の子だけではなく、ネコにも笑われた僕の顔。
夢現(ゆめうつつ)にもネコの張り手をくらい、簡単に蹴り飛ばされた僕の頬。
僕は…ネコの強さほどもないのか。
ネコの攻撃にも耐えられないのか。
男として、あまりに情けなくて泣けてきた。
頬のじんじんと痺れるような痛みに耐え、気力振り絞った僕の…涙で滲んだ視界には、
「待て、クオン!!! 玲くんの大事なほっぺに何するかーッッ!!! しかも、紫茉ちゃんの頭蹴飛ばすとは何事だッッ!! 暴れるなッッ!!」
「よし、神崎、此処はボクが…・うぎゃっ!!! このニャンコ、人間様に頭突きしてくるとは…」
「よくも…玲坊ちゃまの大事な方と、大切なお友達に…ッッ!!」
「フギーッッ!!! フギャーッッ!!」
芹霞と由香ちゃん、百合絵さんがピンク猫捕獲にバタバタ…。
その震動に、更に僕の頬がジンジン…。
「く~ッッ!! あははははは」
紫茉ちゃんは、ネコに顔面蹴り飛ばされても、まだ笑い続けている。
そこまで笑われる僕の顔って…何?
少し怖くてドキドキするけれど、ここは事実を知った方がいい。
知らねばいけない気がする。
それに顔が凄い汗を掻いて、べたべたして気持ち悪いから、洗面台で顔も洗わせて貰おう。
「あのね、僕…」
駄目だ。
皆それぞれ忙しそうで、誰も僕の声に耳を傾けてくれそうにない。
………。
いいよ…別に…。
洗面台くらい1人で行けるし。
場所だって覚えているし。
病人じゃないんだから、歩いていけるし。
だけど何だか寂しい心地しながら、僕は洗面台に赴いたんだ。