シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
寂しい。悲しい。
やっぱり…この僕の顔、芹霞は嫌だよね。
そうだよね…。
鏡に映った僕。
腫れ上がって真っ赤に熱をもって…ぷっくぷくな頬。
人間とは思えない、頬袋持った…大きなリス。
「うう……っ」
ショックで、目頭までが熱い。
ドタドタドタ…。
「玲くん!!!」
また芹霞が戻って来た…と思ったら。
「あたしが直して上げるから!!!」
なんでその手に――
「木工用…ボンド?」
しかも…ガチャリと鍵をかけられた。
僕は、底知れぬ不安を感じて後退(あとずさ)る。
「ねえ――
何を…する気なの、芹霞?」
芹霞の目は…凄く真剣で鬼気迫るモノがあった。
「まだ桜ちゃんが帰らないから、仮止めだけど!!! だけどないよりはマシだと思うから!! 糊(のり)よりは強力だと思うし」
仮止め…?
糊…?
「玲くん…ごめんね、あたしが…あたしが…!!!
玲くんの歯を欠けさせてしまったの!!!」
芹霞はうわあああんと泣き出した。
「だからあたし、責任もってくっつける!!!」
強い意志を秘めた黒い瞳。
黄色いボンドが、僕に突きつけられる。
反対の手には…何やら白くて小さいモノ。
まさか…ボンドで、僕の歯をくっつけようとしてるの!!?
しかも…僕、歯っ欠け!!?
僕は慌てて、舌で歯をまさぐってみたけれど…
「欠けてない。だから、大丈夫!!!」
慌ててそう拒んだけれど。
心底…歯が大丈夫で安心したけれど。
「玲くん、そんな優しさはいらない!! 大丈夫、あたし…小学校の時、唯一図工は"3"だったから!!!」
途端僕は、ぶるりと身震いして、壁に張付いた。