シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「なあ…櫂、いいのかな。タイムカウントされないとはいえ、こんな暢気に休憩してて。…緋狭姉はまだ手洗いから戻らないのか?」
「そうらしいな。アナウンスがかからない」
――アカ~またトイレ!!? 言えばいいっていう問題じゃ…アカ~。また俺の話聞いてないな!!! ちょっと芹霞ちゃん!! 2階のトイレ連れてってよ!! ああ、何だか姉妹でぐうたらしそうだから、俺も行く。
2階に…緋狭さんの偽者がいるんだろうか…?
芹霞も…いるんだろうか。
青い男はどうでもいい。
緋狭さんと芹霞。
いつものような和やかな光景が、2階で……。
………。
ありえない。
俺は振り切るように、ぶんぶん頭を横に振った。
「なあ櫂。やっぱさ、緋狭姉も歳だよな~。歳とると手洗いが近く『馬鹿犬』
突然やけに鎮められたような声が降ってきて、煌は天井に頭をぶつける程の勢いで飛び上がった。
「オ、オネエサマ…イツモピチピチワカワカシクテナニヨリデス」
『…ほう、カタカナで切り返したか。お前も…成長したな。後でたっぷり可愛がってやるよ?』
「ひっ!!!? 俺は芹霞一筋なんで…」
公言された横で、俺は苦笑するしかないけれど。
『ふん、皆で妹、妹とつまらん。もうよい、ROUND2を始める』
「え、まだ2階に、氷皇と芹霞が…」
『あいつはストーカーか。私が入ったのは1階の手洗いだ。私にかこつけ、青い年寄りには休憩が必要なんだろう、きっと。ほら、次の昼ドラが待ってるから、さっさとするぞ』
1階…居間の隣のトイレに、緋狭さんがいたのだろうか?
今行けば、元気な緋狭さんに会えるのだろうか。
………。
いけない。
また乗せられる処だった。
「ニノ、ROUND2の概要を」
『お答えします、櫂様。"守ってはいけません"。ただそれだけです』
どういうことだ?
「何のコトよ? また防御しろってこと?」
『それはお答え致しかねます』
「何だよ、それ!!?」
また…やってみろということか。