シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「煌、次の細かい定義(ルール)は…やらないと判らないらしい。いや…やることでCLEARに必要な定義(ルール)を自分で見つけろとでも言うのかもしれない」
「はあああ!!!?」
「どうだ、ニノ」
『それはお答え致しかねます』
俺はその答えに、にやりと笑った。
『ROUND2、スタート!!!』
緋狭さんの声と共に、ふ…っと、景色が変わった。
荒廃した神崎家が薄れる。
沢山の猫もリスもいなくなる。
そして――
「あ? またウチか?」
見えてきたのは、やはり神崎家。
しかし――
「だけど…何かどっか違うような…。間違い探しでもさせられるのか?」
その光景はどこか色がくすんだような懐古的(レトロ)な光景であり、同時に俺の記憶を鮮烈に刺激する、色彩豊かなものだった。
この矛盾を抱える理由を、俺は瞬時に悟っている。
薄れた記憶。
忘れたくない記憶。
肉体と心が記憶する記憶の色は、濃度が違うから。
今、俺は…心と体双方で、この景色を見ている。
「ん…? こんな処に…何でソファあるよ? この食卓や椅子…知らねえな、俺…。ウチじゃねえのかな?」
見慣れた…懐かしさに胸が締め付けられると同時に、早く此処から逃げ出したいような本能的危機感。
どくん。
脈打つ心臓が意味しているのは、喜悦なのか警鐘なのか。
「ソファの上に新聞があるぞ…? ん…? 何で8年前の…××月××日?」
煌が読んだ…新聞の日付。
どくん。
まさか、という心と、ありえないという心が鬩(せめ)ぎ合い、僅かに呼吸が乱れた。
違うかもしれないという希望的観測が、嫌な予感を消し去ろうとする。
意思が本能を凌駕しようとする。
それを覆したのは――
「お!!? 何だ!!? 人が…」
突如現われた人の姿。
陽炎のようにゆらゆらと揺れるように…突如色彩強くして現われた男の輪郭。
ポロシャツ姿のラフな姿の、若い…黒髪眼鏡の男が居て、ゆったりとソファに腰掛けると、煌が日付を読んだ新聞を手にして読み耽っている。
俺達のことなど、気づいていないように。