シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
男は怖い顔のまま金を受け取ると…突如太い腕を突き出してきた。
殺される!!!
そう…思わず、歯をがちがち鳴らせて固まった時。
――男は根性!!!
――求婚(プロポーズ)頑張れよ、坊主!!!
その怖い顔のままぎこちなく笑うから、気絶しそうになるのを必死に堪えて、ふらふらと…芹霞の元に戻り…
紙と指輪を…俺は渡した。
あれは俺なりの求婚(プロポーズ)。
――櫂、ありがとう!!!
あの時俺を抱きしめた芹霞の…ふわりと笑ったあの綺麗な綺麗な笑顔は、いつまでも俺の脳裏に鮮明に焼き付いて。
その晩も次の日もその次の日も…ずっと眠れずにいた俺。
昼でも、芹霞と離れればちらちらとそれが思い浮かんで。
体が熱くなり、終いには食べ物も喉を通らなくなった。
――櫂、凄い熱だよ!!!?
おまけになれば睡眠不足からか…熱を出して。
それは所謂(いわゆる)――
「恋患い」…だったんだろうと思う。
あの頃の心は俺の中にまだある。
あの熱さ以上の心が俺にはある。
惚れさせる。
お前を。
例え何年かかっても。
俺が生きている限り、
何度もお前に求愛しよう。
俺は…久遠の紙を縛っていた、黒い紐を手に取ると…そこに芹霞の指輪を通して、首に巻きつけ、指輪を手で握った。
あの頃の覚悟を…想いを忘れぬように。
芹霞の中で壊れた記憶なら…
俺が2人分背負ってやる。
俺は…諦めない。
芹霞も…
玲も…
俺のものだ。
玲…。
宣戦布告、したんだからな?
俺は――
「では、行こう。
俺達の進むべき道へ」
全てを取り戻す。
ただそれだけを信じて、
足を踏み出した。
裏世界、へと――。