シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
忘れられぬ残酷な場面に耐え続け、
犯人を許して新たな道を模索することは…
強い、以外の言葉はねえよ。
狂わず逃げず見捨てず。
俺と共に…同じ未来を向いていてくれた。
俺が求めていた強さは…
こんなに俺の近くにあって。
だとしたら俺だって。
これを耐え抜いて、新たな道を切り開こう。
制裁者(アリス)に逃げるのではなく、制裁者(アリス)であった自分を受入れて、俺でしか出来ない道を模索しよう。
俺だから出来る道を模索しよう。
二度と――
制裁者(アリス)には戻らねえ。
俺は――
多くの奴らに支えられて生きてきた。
櫂と緋狭姉だけじゃねえ。
ぼんやりとでも思いだしているらしい芹霞も、玲も桜も…俺を取り巻く者全て。
皆のおかげで、今の俺が居る。
今の…
制裁者(アリス)ではねえ俺が居る。
こんな残虐なことしでかして、
此処まで皆を慟哭させて…。
それでも更正するチャンスをくれたんだ。
本当は殴り殺したいだろう。
切り裂きたいだろう。
その心を抑えて…
共に進む道を選んでくれたというのなら。
それでも――…
俺を大事な幼馴染と言ってくれるのなら。
俺は…逃げては行けねえんだ。
俺は自分を変えていかねえといけねえんだ。
未来を変えていかねえといけねえんだ。
自分自身が卑屈になるのは――
消えればいいと思うのは――
――逃げだ。
「悲劇は――
2度と起こさせねえ」
そう強く言うと…
櫂は俺の肩に…手を置いて。
「ああ。もう…繰り返しては駄目だ。
辛さと苦しみの螺旋は…
何処かで絶ち消さねば…」
そう…言って、静かに辺りを見渡した。
景色の中には…緋狭姉も何もなく。
真紅色までも消え去って。
何事もなかったことのように…今までの景色が蘇る。
8年前の…俺の知らない神崎家に。