シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「お前…言うことは一丁前だけど…胡桃かアメ玉か判らねえなんて、阿呆タレだな。ってか…聞いてねえし。幸せそうな顔して、カリカリしてるし…」
大きくてふさふさしている尻尾をぱたぱたさせて、その姿は可愛いんだけれどな…。
「よし、じゃあこの隙に、このチビ…置いて行「僕は嫌だよ!!!」
「な!!! お前聞いてたのかよ!!? つーか、頭に戻ってくるな!! 全部アメ玉持ち込む気か!!? 頭でカリカリやめろって!! 頭がアメの欠片でベトベトするじゃねえかよ!!!」
煌の頭は余程居心地がいいらしい。
温かさなんだろうか、柔らかさなんだろうか、形なんだろうか、色なんだろうか。
「僕だけ置いて行かれるのは嫌だからね!! 僕だって一緒に行くんだから!! 行って僕も強くなりたいんだ!! もう芹霞の前で負けたくないよ!! 格言にもあるだろ? "昨日の敵は今日の下僕(イヌ)"って!!」
……ないな。
とはあえて言わなかったけれど。
「意味判らねえし。それに…誰が下僕(イヌ)だよ、このチビリス!!!」
情報屋が俺に耳打ちした。
「ここまで慕っているさかいに、ホンマの玲はん思うて、仲良う進めばいかがやろ?」
玲も一緒に…。
こんな姿だと知ったら、玲はどう反応するだろうか。
何だか…笑えた。
「そうだな。いくか、レイ」
「本気か、櫂!!!」
「話が判るね、さすがは僕自慢の賢い従弟だ!!」
………。
俺には、リスの従兄はいないはずなんだけれど。
「ホンマ櫂はんは、ワンワンと大根と玲はんと芹霞はんが大好きやな~。じゃあ全員で翠はんとこ、行ってらっしゃーい。翠はん皆で帰られるの、楽しみに待ってまっせ~」
「「ああ」」
「ああそや。次からついった、またやってな~」
「「……ああ」」
「ねえ、僕のは?」
「ああ、玲はんのはないんや。玲はんの小さな手には、画面の反応悪ぅてな、お詫びにまた5個アメ玉あげますさかい、許してや~」
「仕方が無いな、それで手を打ってやるよ。此処に積んでくれる?」
カリカリカリ…。
「また増えたのか? 髪…洗いてえ…」
そんな煌のぼやきを笑って聞きながら、俺は最後の道を走った。
『○○を禁ず』
一番怪しげな道を。
「率いてみなはれ、あらゆる種の存在を」
俺の耳には届かなかった、そんな情報屋の言葉を背にして。