シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
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目を瞑れば――

幾度も蘇る、ヘリの下の赤い光景。


事前に、爆発する事実とその回避方法を緋狭様から聞いたという櫂様は、最後まで大丈夫だと笑いながら私の頭を撫でたけれど。


沈み行く"約束の地(カナン)"。

消え行く"約束の地(カナン)"。


あの時――

私は唇の震えが止らなかった。


此処までの破壊規模になると――

正直予想していなかったから。


紫堂の名を抱く者達の笑い。

慟哭して意識失った芹霞さん。

その芹霞さんを抱いたまま、久涅を睨み付ける玲様。


私だって本当は――

私は、直ぐにでも飛び降りて、その安否を確認したかった。



だけど――


――いいか、桜。俺と煌は"きちんと"死ぬ。それが出来ねば行けないらしい。"裏世界"の奥には。


私が情報を集めている裏世界の、更に深層部に…櫂様は入ろうとしていた。

それ故に、対外的な"死"が必要だと。



――だから、黙って見ていてくれ。決して手出しするな。



何度も念を押された私は、唇を噛みしめることしか出来なくて。

ただ…祈ることしかできなくて。



櫂様。


櫂様…。


どうか、どうかご無事で…。



1つ…悔やまれることは、この事実をすぐに玲様や芹霞さんに伝えることができなかったこと。


それを聞けば、幾らか心中穏やかになるだろうと思いながら…私はただひたすら口を閉ざし続けた。

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