シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「おいし…ぃ…もっ…と…」
芹霞の掠れた声が、僕の欲を更に煽った。
これでも…抑えているというのに。
「もっと…ねえ…もっと…」
せ、攻めて…くるの?
嘘…。
そんなに強請(ねだ)らないでよ。
そんなことされたら僕――…。
僕――…。
そんな時だった。
ぐぅぅぅぅ~。
芹霞が僕に崩れ落ちた。
「…お腹…減っ…た…」
………。
ぐぅぅぅぅ~。
「食べたい…。
甘いきび団子…食べたい…」
………。
きび団子って…何?
僕とのキスは…きび団子?
「……うっ」
ジンジンジン…。
突如頬が痛み出す。
キスが終わった途端に…こう?
現金な僕の頬。
これからどこまで腫れ上がるのか。
後悔することはないけれど。
あの時間が終わったように思うのは寂しくて溜まらない。
カチャカチャカチャ。
小さい小さい音が聞こえた。
僕の五感は…きちんと現実に帰ってきたようで。
それが物悲しいよ。
もっと続けたいな。
芹霞…駄目?
だけど芹霞は空腹過ぎてくったりで。
虚しくなってきた。
カチャカチャカチャ。
「何の音…?」
ドアノブが回る音ではない。
上?
そして…
何かの視線を感じて、天井を見上げれば。
「!!!!?」
換気口の奥に不気味な赤い光が見え…換気口自体がカチャカチャ音をたてて動いていた。
「ひっ!!? あれは何、玲くん!!!」
芹霞が怯えた顔で僕にしがみついてきて。
僕は、芹霞を庇うようにしてすくりと立ち上がると、天井のそれを見た。
格子模様の換気口。
その奥で――
黒いものが…蠢いている。
しかしその輪郭がよく見えない。
黒の中に…真っ赤な光。
仄かなれど…殺気に似たものを感じる。
警戒に僕は目を細めた。
「玲くん…まさか…
制裁者(アリス)の邪眼!!!?」
芹霞が叫んだ。