シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


カチャカチャ…。


出てこようとしているのか、

あんなに小さい換気口から。


制裁者(アリス)?


制裁者(アリス)が…ここに侵入出来るのか?

周涅と朱貴が居る…この家に?


可能性は…1つだけある。

小さくて…この家に過去も何度も出入りしていたはずの制裁者(アリス)。


――よき旅を。


凱…もしくは雅。


だけど、


「芹霞、あれは――…」


僕の心は否定した。



あれは…



「――…ネコだ」



天井にある換気口。


その格子越しに見えるのは…


「は!!!? ネコって…クオン!!!?」


ネコの瞳の気がする。


僕を睨み付けているような…

怒りで真っ赤な瞳。


何処ぞの誰かのような…

激情の赤色。


「え、でも黒すぎだよ!!?

クオンは白系で…

違う猫!!?」


マンションの最上階で、他の猫が紛れ込む可能性なんてない。


「あれは…あのネコだよ」

「えええ!!? クオンは…毛色まで変えられるの!!!?」


本当に…何でもアリなネコだね。


ガチャガチャガチャ。


降りたくても換気口が動かないようだ。

かといって…元来た道を戻る気もないらしい。


「仕方がないね…」


憎たらしいネコだけれど。

仰天なことを仕出かす、奇天烈なネコだけれど。


所詮、ネコ…だものね。


僕は背伸びをして、手を上げて…換気口を開けた。

こちらから「開」の文字にレバーを合わせればいいだけの、単純構造で。


実にあっけなく。



すると――…


「ニャアアアア」


突然外れた格子ごと…

悲鳴を上げた…ようなネコが、

雪崩のように派手に落下してきた。


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