シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

ピンクではなく…埃被った黒いネコ。

黒く変色したのは…汚れの為に。


まさか僕がこんな簡単に、外すとは思っていなかったんだろう。

換気口に至るまでの砂埃と綿埃と…真っ黒な汚泥を引き連れて、ネコは四肢をバタバタ動かしながら落ちてきたんだ。


「ニャアアアアン…」


…仰向けに。



「「………」」


………。

うわ…。


「「………」」


何も…出てくる言葉がなく。


だって…

当主と渡り合ってたネコが、着地失敗するなんて。


ネコって…失敗するの?


「クオン……また?」


芹霞は…憐れんだ目を向けて、しゃがみこむと溜息をついた。


「ツメが…甘いぞ、お前…?」


つんつん。

お腹を人差し指で突っつく芹霞。


ツメ…は痛かったけれどね。

ネコははっとしたように飛び起きて、何事もなかったかのようにすました顔で座った。


中々の…ネコだね。

この素知らぬふりは、見事だ。


かなりの演技派だね。



僕と目があった。


「「………」」


赤から…色を変える瞳。

冷めたような瑠璃色へと。


此処まで…久遠に似ているなんて。


腹立たしいくらいだね。


しかしそんな冷ややかな顔をしているのに…


「あ、玲くん…!!!」


流石に…僕はよけたけれど。


「!!!」


明らかに…僕の頬めがけた頭突き。


凄い…敵意。


「フギーッッ!!!」

「こら、クオン!!! 玲くんは助けて上げたんじゃないの!! お前はもっと感謝というものを…だから玲くんに何攻撃する!!! 恩を仇で返すんじゃない!!! 聞いてる!!?」


そう怒鳴った芹霞に今度は飛びつき…


「!!!?」


芹霞の唇をペロリと舐めた。
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