シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
それから。このハイスペックパソコンは、急な停電時にはバッテリーからの電源供給に切り替わるようになっていて、データ消失を招く恐れがある強制遮断(シャットアウト)は回避するような作りになっている。
しかも在駐ソフトは、ファミリー仕様のWINDOWSではなく、サーバー開発仕様のUNIX。OSソフト側からも、緊急時の対策は練られているはずで。
カタカタと内部情報を数値で呼び出しても、内部が統制するハード情報を呼び出してみても、僕が読み取れる限りの構造認識は変わらない。
それでも強制遮断された電源。
以前、由香ちゃんが"約束の地(カナン)"でデータが消えたと訴え、実際対象データはパソコンには残っていなかった。
しかし0と1の痕跡を辿れば…確かに何らかのデータは外部に転送された形跡があるんだ。
ということは、電源が落ちてデータ消失をしたのではなく、電源が落ちたように見せかけてデータを転送している…そう考えられないか。
そんな偽装をする必要は何処にあったのか。
まさか…外部からの不正アクセスがあったとか?
――あはははは~。
まあ理由がなんであれ、氷皇の宣言通り転送先が僕のメインコンピュータであるというのなら、この転送先のIPアドレスは一致しない。
IPアドレスが何処のモノなのか、今の僕には調べる術はないけれど、もしも…これが僕のコンピュータに繋がる、裏ルートのようなものであるのなら。
仮に電力を供給しても、正攻法で再起動させられなかった場合、このルートからメインコンピュータを操作できるかもしれない。
それは性悪な青が示した僅かな希望。
「だけど…」
僕のコンピュータだって、セキュリティは強い。
転送されても容易く外部データを取り込んでいるとも思えない。
もし可能であるならば、それは"改竄"があった場合のみ。
「そんな強者、どこの世界に…」
――がははははは。
そんな時に思い出したのは三沢さん。
彼か?
彼と氷皇の間に接点があるというのなら。
元有名なハッカーになら、遠隔から僕のコンピュータのセキュリティホールを見つけて、侵入経路を作り出せるかも知れない。
まだまだ甘い僕のプログラム。
人工知能が人間より劣るのであれば、学習させて進化させることも必要だ。
「僕には課題ばかりだな…」
苦笑しながら、僕は電力供給の解析だけではなく、遠隔操作ができる環境を整えようと色々と細かいプログラムを作っていく。
やれる時に準備しないと。
時間は、待ってはくれないのだから。