シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
カタカタカタ…。
一区切りついたタイミングで、ノックの音がした。
「師匠、ご飯出来たぞ~」
「玲くん、ご飯だよ~」
取り皿を両手に抱えた由香ちゃんと、お盆に4人分の卵スープを乗せた芹霞がやってきた。
芹霞の首には、まだあの白ネコがぶらさがっている。
僕が咲かせた赤い華が見えないじゃないか。
面白くない。
「お~、大分ほっぺがマシになってきたな~。よかったな~師匠」
由香ちゃんが僕の顔を覗き込むと、コトリコトリとテーブルに置いた芹霞も、反対側から僕の顔を覗き込むようにして、優しく僕の頬を撫でた。
「ん…熱も引いてきたね。流石は玲くんの結界。ほっぺの調子はどう?」
「うん、大分よくなったよ」
まだ笑うと痛いけれど。
芹霞が湿布越しの僕のほっぺをさすさすしてくれると、何だか心がほわわんとなって良い気分だ。小動物にでもなった気分。
続けて紫茉ちゃんが土鍋を運んできた。
「お待ち遠様。さあ、芹霞リクエストの、"すいとん風 きび団子雑炊"が出来上がったぞ。桜と百合絵さんのは帰った時に温めてやろうと思うから、出来立てほやほやをまず食え」
………。
"すいとん風 きび団子雑炊"…?
怪しげな名前に思わず僕が怯んだ時、由香ちゃんが僕に囁いた。
「ボクさ、部屋の掃除していて…神崎と七瀬の料理のお手伝いしてなかったんだけれど…気づいたらもう煮込んでてさ。ねね、きび団子って甘いはずだろ? その雑炊って何だと思う?」
そう顔を引き攣らせる由香ちゃんの向かい側では、
「さあ、玲、由香。食え?」
目の前でよそわれた"それ"。
怪しげな色をした不気味な"それ"。
――"あーーーん"。
何でまた、あの切迫感がついて回るのだろう。
「おいちい。紫茉ちゃんのモチモチおいちい!! ねえ、由香ちゃんも玲くんも!! 冷めないうちに、きび団子雑炊食べようよ!! 元気出て来るよ?」
とりあえずは、食べれるものらしいけれど。
まああの"しちゅ~"やクサよりはいいものだろうけれど。
紫茉ちゃんはニコニコしながら、僕達が食べるのを見ている。
じっと見ている。
期待して見ている。
そして目を外すと、肩を震わせ笑っている。
………。
まだ、僕の顔は笑いのツボ?