シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「あの瞳見てたら…食べないわけにいかないね、師匠」
「そうだね…。今度は歯の裏においておけないね、熱そうだし」
由香ちゃんと恐る恐るレンゲに取って口に入れてみる。
口があまり開かなくてよかった。
ちょっとですむし…。
「「………」」
「どう!!?」
芹霞が目を輝かせて僕達を見る。
「どうだ?」
紫茉ちゃも目を輝かせて僕達を見る。
きらきらきら…。
眩しすぎる2組の瞳。
「「………」」
ずずっ…。
もぐもぐ…。
「師匠…。意外や意外、なんだけれど」
「うん。おいしいね…特にきび団子。この甘さと弾力が…」
ああ嫌だね。
さっきまでのキス思い出して、体が熱くなってきたじゃないか。
折角お風呂で鎮めてきたのに。
「師匠、熱でも出た?顔赤いぞ?」
「ち、違うよ。ほ、ほら…熱いもの食べているから」
芹霞はどうなんだろう?
ちらりと上目遣いで芹霞の様子を窺えば、紫茉ちゃんとハイタッチして喜んでいるだけで、全然…思い出してくれてる気配はなく。
芹霞はまだ…物足りないのかな。
もっと…凄いのじゃないと、意識してくれないのかな。
凄いの…。
凄いの…。
………。
何処までどう凄くしていいんだろう?
まず頬治さなきゃ…。
もぐもぐ…。
「……っ」
きび団子…美味しいけど、正直今はこの弾力…頬にきて辛いかも。
残すのは、礼儀違反で失礼だけれど、僕の頬袋落ち着いたら再度頂くことにして、今は紫茉ちゃんに事情を話して…
「あのね、玲くんのきび団子は、あたし作ったの!!」
「"彼氏サン"に愛情込めた甲斐あったな」
「やだ、紫茉ちゃん」
「………」
もぐもぐ、もぐもぐ…。
もぐもぐ、もぐもぐ…。
「……。師匠。そんなにあからさまにきび団子ばかり食べなくても…。師匠、頬を負傷してるの判ってる? あんまり無理すると…」
――"彼氏サン"に愛情込めた甲斐あったな。
もぐもぐ、もぐもぐ…。
もぐもぐ、もぐもぐ…。
食べる。
全部食べる。
頬の痛みなんて、僕の愛に比べれば。
「あんまり無理するとまた悪化しちゃうぞ…なんて聞いてないみたいだね、師匠は。まあいいか。幸せそうだし」
全て平らげたその達成感に嬉々としてすぎて、由香ちゃんのぼやきは耳に届いてこなかった。
「そう言えば芹霞。居間の携帯、何かチカチカ光ってたぞ? あの携帯、芹霞のだよな」
「あ、勝手に充電させて貰ってたんだ。何だろ。メールかな。ちょっと見てくるね」
そして芹霞は居間に行き、そして――…
「なッッッ!!!!」
悲鳴のような声を上げたから、驚いた僕達は居間に駆けつけた。