シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


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あたしの携帯は、一体何を受信したんだろう。

怪電波の発信源が、電脳世界の住人!!?


「僕が電脳世界に置いてきた月長石の効力が弱まっているのかも知れない。もしくは…こちらから流れ込む虚数が増大しているのか」

「師匠、また電脳世界に行くことは出来ないのかい?」

「以前行けたのは、芹霞の偽者にゲームを通じて強制転移をさせられたようなものだからね。普段の僕は0と1の力を感じられても、電脳世界の扉というものは感じられないから、此処から行ったり来たりは…」


玲くんが言う"強制転移"というのは、S.S.Aでのことを言ってるのだろう。

玲くんはそしてスクリーンから戻って来た。

そしてライブ会場から忽然と消えたZodiac。

忍者のようにドロンとか、瞬間移動が出来るエスパーではない限り、彼らが逃げられる場所があるとすれば、玲くんが戻ってきたスクリーン…?


………。


「ねえ、S.S.Aでのスクリーンがあれば行き来出来るんじゃ? どういう原理かは判らないけれど。スクリーンの特殊仕様のせいか、かかっていたZodiacの曲のせいか。はたまたあのドラゴンヘッドのマークが繰り返されていたPVのせいか」


「神崎…そんな簡単には行くはずないと思うぞ? 何処でもドアじゃあるまいし。けど…"約束の地(カナン)"でスクリーンとZodiacはセットだったんだよな。何か意味あったのかな…」

玲くんは、電源を切ってほったらかしにしたあたしの携帯を手に取ると、何かを考えているようだった。

そして充電のプラグを抜き差ししたり、携帯を弄り始めた。

更には自分の携帯も取出して同様なことを繰り返す。

今にも改造しだしそうな集中力。


玲くんに弄られてちかちか点滅する携帯達。

真剣に見過ぎて目をちかちかさせるあたし達。


そして玲くんはすくりと立ち上がると、お食事をしていた客間に向かう。

皆で首を捻りながら、ぞろぞろと玲くんの後をついていくと、玲くんはテーブルの隅に置いていた、青いパソコンをテーブルの上に乗せ、

「紫茉ちゃん。紫茉ちゃんのパソコンのでいいから、電源コード貸して貰えないかな」


「電源? ああ、いいが…」


紫茉ちゃんは黒髪を靡かせて消えて行く。


「何で電源? 七瀬のパソコンもこのパソコンも、バッテリーで動くのに」


「ん……」



そして紫茉ちゃんが持って来た黒くて長い電源コードは、コンセントに差込まれ、その反対側がパソコンに繋がれた。


「よかった。規格は同じだ」


そう言いながら玲くんは電源をつけた。


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