シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「おお? パソコンは大丈夫だったんだね?」
「ああ、由香ちゃん。まるで異常なし。僕の電力データ解析プログラムも正常に終了していた」
「何だって!!? だったら、画面に表示された『ERROR』文字や、警告音は何だったんだ? それにボクが弄る限りでは電源が落ちたまま、うんともすんとも…」
「恐らく、僕のメインコンピュータに転送される偽装だと思う。隠しIPアドレスがかろうじて読み取れた」
「何でまた…。氷皇のせいかい」
「もしくは…三沢さんの知恵か」
何やらクマは、賢しいクマだったらしい。
「で、玲。電源つけて突然どうした?」
カタカタカタ…。
「さっきさ、由香ちゃんがもっとやりやすくするように、Windowsを模した疑似画面まわりとかブラウザ作ったんだ」
「ひょええええ!!? あんな短期間でか!!?」
玲くんは事も無げに言うけれど。
驚きながら喜び、感嘆する由香ちゃん見てれば凄いことなんだろう。
「そのうちの1つメールソフトを…芹霞の携帯アドレスと、僕のにしておいて…振り分けフォルダーを芹霞と僕の名前に2つ作って…」
カタカタカタ…。
「何で玲くんのも?」
怪電波を受信しているのはあたしの携帯なのに。
「じゃ行くよ?」
玲くんはそういうと、何かのキーを押す。
すると、メール画面の受信トレイの受信数が上がっていく。
あたしの受信フォルダも、玲くんのものも。
そして玲くんがそれぞれのメールをランダムで開けて見ると、やはり文字化けのメールばかりで。
「ひいいいっ!!!」
あたしは思わず紫茉ちゃんに抱きつこうとしたら、また玲くんに引き寄せられた。
「なあ師匠。これは…携帯とかパソコンだとかいう媒体や、メールアドレスは関係ないということかい?」
前屈みに画面を覗き込む由香ちゃんが、鋭い目をしながら玲くんに聞いた。
「そ。現に充電プラグを外した後の芹霞の携帯は、何も受信していなかったんだ。で、僕の携帯にプラグを入れると僕のメールも同じ状態になった。だから"携帯"というハードがキーなのかどうか、調べようと思ったんだ」
玲くん、探偵になれるよ。
あたしだったら、絶対お祓いして念仏唱えていたと思う。
「多分原因は…」
玲くんは、繋がったままの電源コードを軽く揺らした。