シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「充電プラグ、電源コード。つまり…この家のコンセントから電気供給をすると、おかしなメールを受信するらしい。まあ、受信できる体制になっていなければならないだろうけどね。携帯では全拒にしても送ってこれたことを考えれば、ネット環境になくても送り付けてくることは出来るだろうけれど」
「何何何、どういうこと? 紫茉ちゃんの家が変なの?」
「いや…多分は…」
カタカタカタ…。
玲くんはあたしをお膝に乗せてキーボードに手を走らせる。
いつも思うけれど…あたし、邪魔じゃないんだろうか。
カタカタカタ…。
「百合絵さんにお願いした電力調査の結果だ」
画面には、東京の地図。
そこにはまるで降水量のように色分けされた棒グラフが伸びていて。
「レベルは3段階に簡略化している。前年比の2倍の電力量をレベル1で緑色、3倍はレベル2で黄色、それ以上をレベル3で赤色表示にしてある」
まるで信号機みたいな色分けだ。
画面には――単色棒グラフが無数に東京地図に散っている。
単色…赤色だ。
その内、玲くんが幾つかを指差した。
「今、紫茉ちゃんの家は此処。この近くに何個か赤い棒グラフがあるよね。ちょっと地図を拡大する」
今度の地図は地域名も伴った。
広尾の紫茉ちゃんの家。
「赤い棒グラフは…1つは六本木、1つは赤坂」
そして玲くんは画面をスクロールさせていく。
「池袋、渋谷、新橋、お台場、虎ノ門…」
「な、何だい、これらの場所は。一貫性がないけど」
「一貫性はあるんだよ、由香ちゃん。ね、芹霞」
突然あたしに振られたけれど、あたしなんか判る筈がない。
ぶんぶん頭を横に振ったら、頭に何かがぶつかった。
「~~~ッッッ!!!」
玲くんのほっぺだったみたいだ。
皆で慌てて玲くんに氷水を飲ませてあげた。
「テレビ局だよ…」
玲くんは潤んだ目でそう言った。
「テレビ局…今は黒い塔が立っている場所が、凄い電力を蓄えている」
玲くんは驚いていないようだ。
多分、予想していたんだろう。