シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「ちょっと待てよ、師匠。黒い塔は虚数を発している。電力を0と1とするならば、それを打ち消す-1が多い場所で、何で電力が発生出来る!!?」
「多分…0と1吸い取って-1で再生不可能にし、0と1を循環させている」
「え?」
「視点を変えるよ。今度は電力消費図だ。色わけは同じにした。消費が一番激しい場所が赤色。それにさっきの黒い塔の地図を横に並べるよ」
カタカタカタ…。
すると、黒い塔がある周辺での電力は大幅に消耗しているのが判った。
「此処周辺の電力を黒い塔に吸い取らせて、骸の虚数を散らしている。これは1時間前、これは30分前、これは10分前。この消耗率は…電脳世界はキツイ」
玲くんは哀しんだ顔つきになった。
「そのSOS?」
紫茉ちゃんの問いに、玲くんからの返事はなかった。
まだ何か考える処があるのだろうか。
「ねえ、玲くん。だけど電気を消耗しているのは、黒い塔周辺だけでもないんだね」
あたしは幾つか指をさした。
「まあ黄色い棒グラフだけど。此処とか、此処とか」
「この場所は…新宿、神田、新橋…?」
玲くんはまた地名を表示させてぶつぶつ唱えていた。
「なあ師匠。東京に"約束の地(カナン)"と同じ黒い塔が立ってるということはさ、師匠から聞いていたし、虚数塗れの何らかの"電気異常"があるのは何となく受入れられるんだけどさ、もう1つ…あれはどうなんだい」
「あれ?」
「東京タワー」
あたしは玲くんと目を合わせた。
ツインタワーだとか言われている、馬鹿げた塔のこと。
明らかに意味ありげで、何か不吉な象徴としてしか思えないそれ。
玲くんは画面を動かして、電気量を見てみたけれど、
「変化ないね。別に電気増えてる訳でも減ってる訳でもなさそうだ」
一体何の為にあるんだろう、あのおかしなものは。
ただのオブジェ?
玲くんは腕を組んで益々考え込んでしまった。
深く考えて引き籠もってしまった。