シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
――しかしあたしは非力な一般人。儀式と言われてもまるで効果ないこと判りきっていると思うのになあ。実際どんな儀式なのかも記憶ないし。
ぶつぶつと、ぼやいていたことを思い出して。
………。
「玲くん」
あたしが呼ぶと、鳶色の瞳はあたしに向いた。
なんだかほっぺが可愛くて、さすさすしながら聞いてみる。
「そう言えば…当主も"儀式"って言ってたよね。紫茉ちゃんが紫堂に居たこと…関係あるの?」
ごくり。
玲くんが唾を飲み込む音が聞こえたような気がした。
玲くんの怯えたような眼差し。
触れられたくないような…そんな眼差し。
………。
閃いたのは直感のようなもので。
だけど口にするには何か怖くて。
「まさか…玲くんの相手…って?」
鳶色の瞳が、肯定するように大きく揺れた。
「"ミコさん"じゃないの…?」
由香ちゃんが八の字眉毛で言った。
「七瀬は…"北斗の巫女"っていうんだろう?」
「ミコって…人の名前じゃなくて、巫女さんのこと!!? で、その巫女さんが…紫茉ちゃん!!? だから紫堂に居たの!!?」
玲くんはあたしを見て、静かに頷いた。
玲くんとの相手が…紫茉ちゃん!!!?
半分、涙目だ。
――子を成して貰う。
「何だ? あたしが何だ?」
判らないらしい紫茉ちゃんが、玲くんに首を傾げると、玲くんは深い溜息をついて言った。
「皇城と紫堂はね…
僕と紫茉ちゃんとの間に、子供が出来ることを望んでいる」
そう言いながら、玲くんはあたしの手を握った。
少し震えて冷たくなったあたしの手を、ぎゅっと強く握りしめて。