シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「欲しいのは…僕の遺伝子を持つ子供。紫茉ちゃんはそれに耐えられる可能性があるらしく、その子供を育て…何かに利用しようとしている」
「何だって…!!?
あたしと玲とが…子供!!?」
紫茉ちゃんは驚きの余り固まってしまって。
由香ちゃんがゆさゆさ体を揺らして、ようやく戻って来た。
「紫茉ちゃん…」
綺麗な綺麗な紫茉ちゃん。
紫茉ちゃんの相手が、あたしの"彼氏サン"…。
綺麗な綺麗な玲くん。
玲くんの相手が、あたしの好きな女の子…。
「玲!!! あたしはお前と結婚しないといけないのか!!? 芹霞の"彼氏サン"とあたしが!!!?」
声を裏返らせた紫茉ちゃん。
それは喜悦ではなく、嫌悪にも近い。
「いや、結婚はない。望まれているのは子供だけ」
すると紫茉ちゃんは、ほっとしたようにして笑う。
「なんだ…結婚させられるわけじゃないなら安心じゃないか。子供は出来るはずがないからな」
「……七瀬、その心は?」
「あたしは玲と結婚しないのだから。する気は全然ないし」
毅然と拒否する紫茉ちゃんは清々しい。
だけどその対象の玲くんの顔は、微妙だ。
やっぱり玲くんは紫茉ちゃん相手なら…。
「違う、ここまできっぱり拒まれたの初めてだから。それに言ったでしょう? 僕は君を裏切らないって」
耳元に囁くような固い声。
同時に恋人繋ぎになった手の力が強まった。
「ぶれないよ、何があっても。
僕が欲しいのは芹霞だけだ」
………。
何だろう。
今、すごくきゅんときた。
きゅんときて、泣きそうになった。
それを隠すようにあたしは俯いてしまった。
「いや…七瀬、結婚しなくても出来るモノは…出来るだろうし。まあ…そういうことをすれば、の話…」
由香ちゃんの…どもり気味の声が聞こえる。
あたしだってどうすれば子供が出来るのかくらい判っている。
だから玲くんの元カノサン達が妬ましく思ったし。
だけど紫茉ちゃんが知る子供の作り方は、どうやら違うらしい。
「は!!!? 子供は…結婚した後――
"あの一族"が連れてきてくれるんだろう!!?」