シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「「「え?」」」
あの一族って…何?
「くさの下に口2つ、にょろを取った進むの右に、鳥の…一族だぞ?」
「「「はい?」」」
蒼生ちゃんの暗号並に、益々難解だ。
しかし玲くん、徐(おもむ)ろに宙に何かを書き始めた。
「くさの下に口2つ、にょろを取った進むの右に鳥…って、
"鸛(コウノトリ)"!!!?」
「うちによく来るおじさんがその一族だと、周涅が本人の前で説明してくれたんだぞ!! 表向き"鸛(カク)"さん、裏ではコウノトリさんと名乗っているこの一族は、結婚したての処に赤ちゃんを乗せたゆりかごを運ぶのが仕事で、だけどそれを大々的に人に言うことが出来ないから、秘密にしていて欲しいと。
何て素晴らしい愛の仕事をしているのだと、あたしは感激していたんだぞ!!!
違うのか、赤ちゃんは…そうじゃないのか!!?」
紫茉ちゃんは半分涙目で。
「「「………」」」
今の時代、コウノトリさんとかキャベツ畑とか、そういうの信じている女の子がいたんだね?
あたし、随分とそういうの遅れていると思っていたけど、実は紫茉ちゃんに比べればかなり進んでいたのかもしれない。
そうだよね、あたし…緋狭姉と発情ワンコと一緒に住んでいるしね。
紫茉ちゃんの顔は真っ青で。
今までの固定観念が覆されて茫然自失状態。
周涅がからかったのは間違いない。
そして"鸛(カク)"という人間が実在するのならば、周涅の言葉に口を差し挟めない立場にいる者なんだろう。
だけどそれが違うと判ったら、聞いてくるよね、確実に。
「だったらなあ、じゃあ結婚していなくて、どうすれば子供が出来るんだ? 何をあたしと玲に期待してるんだ、皇城と紫堂は。なあ…玲、詳しく教えてくれよ、子供の作り方」
ほらね。
「な、何で僕に…」
玲くん、凄く困り果てて汗がたらたらだ。
「……。そ、そうだ、七瀬!!! 師匠じゃなくて…朱貴に聞けばいいよ」
見兼ねた由香ちゃんが助け船を出してくれ、玲くんは額の汗を手で拭って安堵の息を漏らしている。
「朱貴に…?」
あたしもその船を押してあげた。
「そ、そうだね。由香ちゃんの言う通り…紅皇サンは保健医だし…。そういうのは、保健医の仕事なんだよ?」
さあ船よ、進め進め。
あたしだって花も恥じらうオトメ、説明は甚(はなは)だ難しい。