シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「何で朱貴が紅皇サンなのか判らないが…そうだな。保健医の仕事だというのなら、幾ら横暴な奴でも教えてくれないはずはないだろう。
よし。赤ちゃんはどうやったら出来るのか、朱貴に聞こう」
最強の紅皇サンは、どうやって答えるんだろうか。
その場面を見てみたい。
うん、もうあたしは完全人事だ。
それでも。
やはり紫茉ちゃんと玲くんの2ショットが現実味を強めれば、あたしなんかより紫茉ちゃんの方が玲くんに相応しい気もしてきて。
この2人に恋愛感情が芽生えたら、今みたいに拒絶するだろうか。
本当に愛し合う関係になったのならば、玲くんだって…。
紫茉ちゃんだって…。
「ないよ、神崎。
神崎には師匠、七瀬には朱貴がいるから、ありえない」
あたしの思考を見透かしたように、由香ちゃんが首を振る。
「由香、何で朱貴?」
紫茉ちゃんの声が聞こえるけれど。
「そうだよ芹霞。安心して?
僕は…君のモノだからね?」
俯き加減のあたしの顎を上に上げながら、精一杯の笑顔を作った玲くん。
かなり痛そうだけれど。
「うん」
あたしは力強く頷いた。
「そうだよね、あたし信じる。
紫茉ちゃんは玲くんのモノじゃないって」
そう、信じていよう。
信じなくてどうする!!!
「……。由香ちゃん。僕…言葉間違えた?」
「いいや…間違ってないよ?」
「優先順位、僕が下……?」
「……。師匠、どんまい?」
ふふふ、ふふふふふ…。
そんな時、紫茉ちゃんが声を上げた。
「あれ…あそこに落ちているのは何だ?」
立ち上がった紫茉ちゃんが、部屋の片隅から何かを拾ったようだ。
「ああ…ボクが紫堂当主の部屋からくすねてきた写真だ。クオン追っかけてこんなトコに落ちたんだな」
青いワゴンで桜ちゃんとも一緒に見た写真らしい。
可愛い女の子が映っている写真。
実は当主、ロリコンだったら面白い。
そうしたら、それを盾にして玲くんに謝罪させて手を引かせるのに。
思わず黒い笑みが零れてしまうけれど。