シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「由香ちゃん…当主のトコからくすねたって…!!!?」
玲くんの裏返った声に、邪念はふつりと消された。
「ああ。古ぼけた写真だけれど」
「凄いことするね…。ばれたら、警護団総動員ものだよ?」
引き攣って固まった由香ちゃんの手から、写真がひらひらと落ちた。
代わってそれを手にしたのは紫茉ちゃんで。
「……え? これ!!!?」
「知ってるの、紫茉ちゃん?」
「あれ…?」
「玲くんも?」
「"約束の地(カナン)"の…氷皇から見せられた"ヒント"の集合写真の中に、この顔…見た気がする。朱貴もどき、聖もどきと一緒に…」
同じモノを見ていても、あたしにはまるで記憶にはない。
あの写真に久遠は居たというのなら、久遠なら判っているだろうか。
何かの記憶の片鱗が、残っているだろうか。
だけど基本、だらだらだからなあ…。
昔はそこまで酷くなかったと思ったんだけれど。
初恋は美化されるんだろうか。
由香ちゃんはまだ固まったままだ。
「紫茉ちゃんは何処で?」
あの場には居なかった紫茉ちゃんに、聞いてみる。
「あたしは…」
その時だ。
ガシャアアアアン!!!
硝子が割れる音がしてあたし達は飛び上がった。
「居間からだ!!!」
玲くんは駆け、あたしの首元のクオンも降りたち後に続く。
そして後続のあたし達の目に入ったのは――
「百合絵さん!!!?」
硝子の破片を撒き散らして、壁に背中を激突させた…血だらけの百合絵さんの姿だった。