シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
その顔は蒼白で、血が身体の至る処から流れ出て染みを作っている。
「百合絵さん、百合絵さん!!?」
傍に居た由香ちゃんと紫茉ちゃんが声をかけたら、朦朧としたような状態で…苦しげな声は漏れるけれども、確りとした意識はないようだ。
「そんな…!!!」
窓の外を見て声を上げたのは玲くん。
「玲くん、どうしたの!!?」
「そんな…まさか、
百合絵さんをやったのは――
お前なのか!!?」
あたしは慌てて玲くんの横に立った。
玲くんの視線の先は…
向かい側にある、眺め下ろせる一軒家の屋根。
誰かが立っている。
こちらに…突き刺すような視線を向けて。
それは…
其処に居るのは…
「――桜ッッ!!!?」
ええええ!!?
桜ちゃん!!!?
其処には紛(まぎ)れなく――
にやりと、
口端を吊り上げて嘲笑する…
桜ちゃんが居たんだ。
明らかに――
いつもの桜ちゃんじゃない。
いつものような冷めたような表情のものではなく、逆に高揚しているような顔つきで。
それが妙に…恐ろしく感じるんだ。
眺め下ろす玲くんから、妙に緊張した空気を感じる。
クオンが毛を逆立てて唸り声を出している。
「なあ…神崎。紫堂本家で、襲いかかってきた警護団、あんな感じじゃなかったか?」
後ろから、恐る恐る覗いてきた由香ちゃんがそう言った。
「活力がある、ゾンビ…みたいな。
なあ…葉山は――
死んでないよな!!?」
「桜ちゃんが死ぬわけないでしょう!!!?」
あたしはヒステリックに叫んだ時、
「やばいな、あの顔は…」
玲くんが舌打ちした。
「興奮状態。力が…暴走している感じだ。
力に溺れ、陶酔しているような…顔だ」
「何でだ、玲。何で桜は…」
紫茉ちゃんが叫んだ時だった。
「危ない、来るッッ!!!」
玲くんが叫ぶのと、
「フギーッッ!!!」
クオンが飛ぶのと――
桜ちゃんが窓から入ってきたのは――
ほぼ同時だった。