シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


ガシッ、ガシッ!!!


ああ何てこと。


桜ちゃんが――

玲くんを攻撃しているなんて。


ぶつかる手と手、足と足。

猛速度で攻撃と防御を交互に繰り返す彼らの動きは、具体的にどうだとか言えない程に速く、1つだけ確実に言えるとしたら…それは遊びのような"戦闘ごっこ"のレベルではないことだけ。


素早くて身軽な桜ちゃんと、速さを保ちながらも優雅さを忘れていない舞うような玲くんの体術のぶつかり合いは、功夫(カンフー)映画を見ているような心地すらする。


ガシッ、ガシッ!!!

ガシッ、ガシッ!!!


だけど――。


おかしいよ…。

絶対おかしいよ…。


――はい、玲様。


桜ちゃんは玲くんを本当に慕っているんだから。

玲くんに手を上げるということが考えられない。


大きい桜ちゃんの目が、益々大きくなっているように見える。

瞳孔が開いているような。

息も凄く荒く、興奮状態にある。


確かに由香ちゃんの言う通り――

あの…紫堂本家で襲ってきた、警護団の表情とそっくりだ。


だけど桜ちゃんは生きてるよ。

絶対生きているんだよ!!!


「桜、どうした!!?」


桜ちゃんの手を捻り、その反動で床に桜ちゃんを打ち付けた玲くん。

俯せのようになった桜ちゃんは、びくりと動き――



「な!!!!」



捩(ねじ)るように反対側に仰け反った。

背骨、痛くないの!!?


そうして手の衝撃を逃したようで、今度は玲くんの手をぐいと下に引っ張り、それを軸にして、玲くんの頬に片足で蹴り飛ばそうとして。

玲くんは、半分屈み込んだ…無理な体勢のまま、片腕を立ててその足を弾き、桜ちゃんの胸倉を掴み、弾いた手で桜ちゃんの鳩尾に拳を入れた。


「厄介だな…痛みを感じていないようだ…」


桜ちゃんはニイと残虐めいて笑い、玲くんの心臓を打ち付けようとした。


いつもの桜ちゃんならば、ありえないよ。

心臓を患う玲くんの…胸を狙うなんて。


バシッ。


玲くんは反射的に、手の平で受け止めたけれど…


「更に厄介だ。桜の力が…凄い」


宙で…玲くんの手と桜ちゃんの拳が触れ合ったまま止っている。


どちらにずれることもなく、小刻みに震撼している。


ああ…震えているのは、玲くんの方か。

玲くんが押されているの!!?


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