シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「玲、手助けするッッ!!!」
そんな時、桜ちゃんの真横から足が飛んで来た。
「紫茉ちゃん!!!」
しかしそれを、桜ちゃんの反対の手に弾かれてしまうと、紫茉ちゃんは片手を床につけて、回転するように…再度、速度をつけた足を向けて。
同時に…
視界に走る白。
「ニャアアアン」
クオンがムササビのように宙を飛び、玲くんの胸へと続く桜ちゃんの腕に噛み付いた。
それでも桜ちゃんの表情は変わることなく。
「玲坊ちゃま…」
その時、百合絵さんが唸るようにして声を放ち。
「駄目だよ、百合絵さん!! 動いちゃ駄目だッッ!!!」
ドシーンッッ!!!
よろめいて前に転んだ百合絵さん。
建物が酷く揺れた。
玲くんの力でも抑えきれないのは、桜ちゃんだからということで無意識に手加減してしまうからなんだろう。
玲くんの顔に葛藤が見えるんだ。
そんな玲くんと力比べをしている手は、クオンが噛み付き…血が流れているというのに。
反対の手では、紫茉ちゃんが…格好いい紫茉ちゃんが、攻撃をしているというのに。
桜ちゃんは――
2人プラス1匹相手に動じることがなく。
目を見開いたような…依然、興奮状態のまま。
楽しそうな笑いすら顔に浮かべて。
どうしよう。
どうすれば暴走する桜ちゃんを止めれるんだろう。
そんな時、ふと思い出した。
もし桜ちゃんの様子が、紫堂本家の警護団と同じだというのなら。
確かあの時。
桜ちゃんは…警護団の耳から、細い何かを引き抜いていたはずじゃなかったか。
だからあたしは――
膠着状態になっている桜ちゃんの背後から、
そろりそろりと近寄り…
もうそれは慎重に歩み寄り…
「ひっ!!!?」
桜ちゃんが突然あたしに振り向いた。
嗜虐的な笑いを浮かべて。
そして紫茉ちゃんに向かっていたその手をあたしに延ばしてきて。
それは凄まじい早さで、あたしの眼窩に飛び込んできて――
「芹霞、あたしが援護する!!!」
ガシィッッ。
紫茉ちゃんが…桜ちゃんの手を両手で掴んでくれた。
一瞬でいいから。
すぐすむから。
何処?
何処にある?
「あった!!!」
桜ちゃんの耳に――
見落としそうな程細く長い…
針のようなものを引き抜いたんだ。