シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


あたしがベランダから下を覗くと…

「………」


「何だ、芹霞どうした!!?」


紫茉ちゃんも下を覗くと…


「………」


「どうしたの、一体?」


玲くんも覗いたのだけれど…


「………」


背後から、大きな溜息が聞こえて。


あたしは振り返りながら、溜息の主に聞いた。


「由香ちゃんも、見てみる?」


すると由香ちゃんは真面目な顔で頭を横に振って。


「想像出来るから…やめとく」


「うん、それがいいと思うよ? クオンもきっと喜ぶし」


「なあ玲。猫っていうのは…」


「ネコはね、換気口からも着地出来ない生き物らしいよ」


「そうなのか。初めて知った…。あたしは…世間知らずのひよっこだな」


「大丈夫。僕も引き籠りの人間だし」


「そうか。あたし達気が合うな!!」


ちくん。


玲くんと紫茉ちゃんが微笑みあう姿を見ていると、胸に何か突き刺さってくる。


お似合いの2人。

子供まで所望されている2人。


あたしは爪弾きにされたようで。

息苦しい。


何だか…心臓のあたりが痛い。


「そうだ師匠。何で副団長だと!!? あの後、葉山が暴れたから聞き損なったけれど」


玲くんは、あたしが引き抜いた針を手にしていて。


「この針は…仕込み針なんだ。この針の先端に、クレンブテロールという興奮剤かつ筋肉増強剤の薬を仕込んで、内耳の奥…中枢神経に直接送り込む。

桜の瞳孔が開いて顔は上気した興奮状況、そして痛みを感じないことや凄い力だったのを思えば…クレンブテロールだと思う。

これはね…副団長の武器なんだよ」


「でも!!! 紫堂本家でそれを見た葉山は、訝っていただけで!!! 副団長の仕業だって気づいた素振りはなかったぞ!!? 団長の葉山が何でそれに気づかないのさ!!!」


「ああ、副団長がこれを使っていたのは、桜が団長になる前だったからね。桜は1匹狼で、団長職以外の下積み生活をしていないから、誰がどの武器を得意とするのか、把握しきれていない部分がある。大体は判っているんだけれど、この武器は…当主が止めさせたんだ」

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