シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「あったぞ、玲!!!」
「よし!!! 僕も回復結界を芹霞にかけた処だ」
「師匠、水だ!!!」
「芹霞…口を開けて…芹霞?」
「玲!! あたしが口移しで!!!」
「それは僕の役目だ!!!」
「喧嘩するなよ~。七瀬、悪いけど…此処は師匠に…」
「芹霞…頑張れよ…」
口の中に何かが入ってくる。
ゆらゆらゆら…。
揺蕩(たゆた)うように揺れるのは、あたしの身体か、意識なのか。
沈み行く闇の世界が不安定な息苦しさを伝えてくる。
「芹霞、呼吸を僕に合わせて!!! くっそ…過呼吸が収まらない!!」
「救急車を呼ぶか!!?」
「多分…呼んだら最後、紫堂に連れ戻される。僕も芹霞も紫茉ちゃんも!!!」
苦しい。
苦しいよ。
――芹霞ああああ!!!
痛いよ。
胸が痛いよ…。
まるで心臓が抉り取られたみたいに…。
どくどくどくどく…。
やだ、何!!!?
ああ…
あたしの手にある赤いのは何?
あたしの――
――…心臓!!?
――芹霞あああああ!!!
――ちゃあああん!!!
声が…重なっていく。
判らないよ。
一斉に泣かないでよ!!!
泣きたいのはあたしの方。
だって…
あたしの…
あたしの心臓が此処に…
「芹霞!!! チアノーゼ!!? しかも…狭心症起こしかけてる。薬を飲んでいるのに…何故落ち着かない!!?」
「神崎、神崎ッッ!!!」
「芹霞ッッ!!!」
違う…。
これは、真紅に塗れた…
黒い…
黒い石。
これは…?
「紫堂玲!!!
紫茉の薬は、効かない者もあるんだ!!!
安易に呑ませるなッッ!!!」
「じゃあどうすればいい、朱貴!!!」
――芹霞ちゃん。私に…
あたしは…
闇に…
――心を頂戴?
沈んでいった。