シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

合流 煌Side

 煌Side
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とにかく俺達は走った。


完全なるTimeOverまで、時刻はあと10分弱。


『○○を禁ず』


怪しげなこの崖道の先に、小猿が待っている。


あいつは1人で戦っている。


俺達2人でさえ、あんな…心蝕むような試練があったんだ。


小猿は何を禁じられているのだろうか。

何が待ち受けているのだろうか。


そう思えば、警戒心に気が引き締まる。


カリカリカリ…。


忌まわしき玲リス。

俺の頭に居座り、ずっとカリカリしてやがる。


「おい、緊張感のねえカリカリはやめろって…!! ああ!! やっぱ髪、べたべたになってきちまったじゃねえかよ!!」

「煩いなあ。べたべたなら後で洗えばいいだろ? 僕のカリカリは何をしても落ちない現在進行形なんだ!! ずっとずっとカリカリして、愛の形にしてるんだ」

「だからリス事情なんてどうでもいいんだよ。それに!! カリカリしすぎたら、お前の求愛が小さくなったんじゃねえのか!!?」


「失礼なワンコだね!!! 僕の求愛の大きさは、大きくなっても小さくなることはないんだよ!!! も~怒った。これでも食らえ、えいえいえいッッ!!」


「うわ、判った判ったから、その鉄の胡桃やめろって!!!」


頭から摘み捨てても、当然のようにぴょんと飛び乗ってくるから厄介なリス。

下膨れだけれど愛くるしい顔をしていて、何でこんなに凶暴なんだろう。

何でこいつ、くっついてくるんだろう。


「煌、何が聞こえて来ないか?」


櫂が神妙な顔をしてそう言った。


「ああ…なんだろこれ。聞いたことあるな…」


♪チャーチャチャチャーチャチャチャー


「あれ…テトリスの…音楽じゃねえか? クマもやってたよな」

「ああ。ロシア民謡『コロブチカ』だよな、やっぱり…」


櫂は溜息をついた。


「どうしたよ?」


「いや…今までのことを思いだしていたらさ、必ず道を選ぶ前に…あの情報屋達は何らかのヒントを出していたんだ。最初こそ道の分岐点で何選ぶか判らない状況だったから、オレンジワンコの半纏柄くらいの符合だったけれど…」


「あの、失敬な柄が?」


「ああ。首輪は…"犬の散歩"になった。次にはコタツ。今度もそうだとすれば…テトリスと…」


「ガリ勉?」


「……翠、頭を使わせられている気がするな」


「頭…って、小猿に使える頭なんてねえだろ」


「苦戦してるぞ…翠…」


つーかさ、頭使わせられるのなら…お前いないとやばいじゃん。


そして行き着いたその先には、2m幅はある大きな木製の机に、並んで4人ぐらいは座れるんじゃねえかと思う木製のベンチが向かい合わせに2つ。

そこには机にぐったりと顔を伏せた小猿が居たんだ。
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