シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「ねえ、なんでこのリス、ほっぺがぷっくぷく?」
小猿、ぷっくぷくなんて言ったら…
「猿の癖に失礼だね!! 猿にぷくぷく言われたくないよ!!! 僕はね、猿より頭いいんだ!! 僕をリスだって馬鹿にするな!!」
「!!!!?」
やっぱり。
姿は可愛くても、性格が可愛くない癇癪持ちが怒り出す。
小猿はその迫力に、ただ飲まれているようで。
「嘘だと思うなら、この問題解いてみろよ!!! どっちが早くに正解出来るか、競争しようじゃないか!!」
玲リスは、小さい手で山から1枚の紙を鷲掴むとそれを小猿に突き付け、証文を呈示する借金取りのように威張り腐っている。
その紙には――
『三大疾病を3つ書け』
うわ…難しそ。
何だソレは。
「ふん、簡単だね。僕なんてさささって書けるよ」
「!!! 俺だってこれくらい、すぐ書けるさ!!」
玲リスも小猿も、躊躇うことなく…違う紙の白紙部分にカリカリと書き始めたんだ。
猿とリスが…答え判るのか!!?
俺はさっぱり判らねえ。
「櫂、この"サンダイシツビョウ"って何?」
こっそり聞いてみたら。
「"サンダイシッペイ"。
癌、急性心筋梗塞、脳卒中のことだ」
やはりこっそり答えが返ってくる。
リスと猿が張り合って、猛烈な速さで鉛筆を動かしている。
小猿は人型だからいいとして、机に立っている玲リスは、両手で大きな鉛筆を…船の櫂で漕いでいるかのように動かし…何とも器用だ。
「いいか、猿。ちゃんと漢字で書けよ?」
「判っているよ、それくらい」
すげえ…この猿とリス…。
漢字で書くのか!!?
俺は櫂の答えから、漢字なんて想像すら出来ねえ。
「書けるのか…?」
櫂も驚いた表情で見守っていて。
「出来た!!」
先に朗とした声を上げたのは小猿だった。
「え!!?」
驚いた玲リスが、派手に鉛筆を落して小猿の答案を覗き込んだ。
そして――
「負けた…。
ワンコにも猿にも負けた…」
耳と尻尾を垂らせてしょげた。
「ワンコ、俺勝ったぞ、このリスに!!!」
「おおそれはすげえ。よく書けたなお前!!」
「ああ、ちゃんと慎重に見ながら書けば、何てことないさ」
やけに得意げだけれど――
"見ながら"って、何見たんだ?
「お前答え見せてみろ」
解答を取り上げた。
俺は覗き込んだ。
櫂も覗き込んだ。
「………」
「………」
玲リスの解答も覗き込んだ。
櫂も覗き込んだ。
「………」
「………」