シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「桜、覚えてる? この部屋に来た時、僕が芹霞を寝せるベッドの…マットレスの下を手で触っていたの」

「はい」


私は、芹霞さんの為にベッドメイキングしているのだと思って、特に何も感じていなかったのだけれど。


「仕掛けられているんだよ、盗聴器。

僕がこの家戻ってから、あちこち至る処に盗聴器が仕掛けられていてね、それを率先して仕込んでいるのは執事たるあの男さ。

当主か久涅からかの命令なんだろう。

僕の部屋なんか凄いものだよ。

息することもままならない。

あの部屋、どかんと爆発させたら、爽快だろうね」


玲様の部屋に…盗聴器?


「僕が風呂から上がったのを見計らうようにして、あの男とこんな時間に廊下で擦れ違ったから、試しに部屋を変えると言った途端、あの慌てよう。


この部屋に戻ってきた時、判ったよ。

また違う電気の流れを感じたから。


折角盗聴器を仕込んだのに…部屋を変えられちゃ面目ないものね」



口元は笑うが、目は笑っていない。



「桜。櫂の部屋にいこう。

まだ…使われぬままに残っているはずだ」


使用人が、次期当主の部屋を触るのは御法度。

それなのに、次期当主である玲様の部屋には、盗聴器が平然と仕掛けられている。


蔑まれている…それが玲様に対する紫堂の現状。

だからこそ、櫂様は玲様を案じていたんだ。


「僕はね、桜。


"約束の地(カナン)"を爆発させた2人が、どうしても許せないんだ」


鳶色の瞳に瞬いているのは確固たる意思。


「櫂が来るまで耐えていようと思っていた。


だけど櫂を――

あんな爆発までさせて追い詰めるのなら。


僕にだって考えがある」



玲様は芹霞さんを見つめられた。



「僕が今しないといけないこと――

それが判った気がする…」


そして芹霞さんの髪に唇をあてられて。



「僕は――


強くならないといけない。


櫂に…負けないくらいに強く…。


それが僕に出来る、贖罪だ」



「玲様……?」



玲様が何を決意されているのか、

私にはよく判らなかった。


「桜――

何があっても、僕を信じてくれ」



「え?」



「この先、

何があろうとも――」



不吉な――

予感がしたんだ。



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