シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
悪いが、俺は櫂がニノと何を話しているのかさっぱりだ。
小猿もただポカンとしているだけだから、判ってねえだろう。
リスはカリカリし始めたから、理解しようとすらしてないに違いねえ。
「落下ブロックを受け取る際、積み上がっているブロックに触れても良いのか?」
『お答えします、櫂様。よろしいですが、触れている間のブロック落下速度は5秒速くなります』
「やはり…前半に正解率あげて消費していった方が無難だな…。10回目までは30秒で1落下…最低8段でアウト。放置すると240秒…4分でGAMEOVER…。
ニノ、採点からテトリスに行き着くまでの時間は?」
『お答えします、櫂様。採点はどんな問題量であれ、3秒かかります。それが全て正解であった場合、直通ルートは5秒。迷路の場合は"抜けられるまで"です』
カリカリカリ…。
「ということは、全問正解でテトリスをするまで8秒は最低かかる。やはり4分放置が最大限度ということか。1問を5秒で解いたとして、48問しか進まない。
そして全問正解できたとして、8秒差し引いてあちらで…ん…。
ニノ、GAMECLEARに関して、今であれば111問消しと問題解答が必須なんだな?」
『お答えします、櫂様。そうです』
「問題を正解する意味は、ブロックの重さを軽くするためと直通を開くだけにあるのか?」
『お答えします、櫂様。それ以外では迷宮内で有利になります。その内容はお答え致しかねます』
カリカリカリ…。
「正解の意味は…テトリス組がやりやすくする為、か。解答が正解であれ、不正解であれ…テトリス組は迷宮さえ抜ければ、丘に行き着ける。だが迷宮には何があるのか判らない…。ニノ、例えば解答は不正解だけだったらどうなる?」
『お答えします、櫂様。解答は空白は認められません。持ち込まれた解答の内、不正解率が40%を過ぎれば、強制GAMEOVERになります』
櫂が腕を組んで考え込んだ。
「小猿…お前不正解率40%以下で進んで来たのか?」
「俺、何気に凄いな…。アナウンスで急かされてやるだけだったけど」
「お前…此処まで考えてやってねえよな?」
「全然何も。とりあえずイケイケGOで」
「だよな。俺だってそうだ」
何をどう計算していいか判らねえし、もう何がどんな秒数なのかごちゃごちゃだ。
カリカリカリ…。
「おい、あの迷宮に何があるんだよ!!?」
「言葉じゃ言い表せない。あえて言えば…あそこ通り抜けられるのは、煩悩がない聖人だ」
神妙な顔で小猿が言う。
「何だそれ」
カリカリカ…。
「煩悩がない? だったら僕みたいな清い「邪念塗れのリスは黙れ」