シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
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『お知らせします、90秒になりました』


ニノの声に、俺は手を止めた。


「まずは…俺が行ってくる」


そう立上がった時、


「ワンコ。邪念を払えよ?」


俺を見上げた小猿が真剣な顔で言った。


「俺…ひっかかって…酷い目に遭ったんだ。何処をどうとは恥ずかしくて言えないし、コロコロ変わるから同じもんが出るとも限らないけど」


恥ずかしい?


「恥を忍んで言えば、俺…葉山のセーラー服にやられたんだ」


そう言った小猿の顔は、温泉に入った猿のように真っ赤になって。


桜の…セーラー服?


「ワンコは大人だから大丈夫だと思うけど。迷路の中で定義(ルール)は"変化"するかにな。気をつけろよ」

「ああ、さんきゅ」


一体何が待ち受けているのかまるで判らねえけれど。

益々不可解な気分になったけれど。


「じゃ煌、頼むぞ。お前の様子を見計らって、俺も続くから」

「おう」


俺は、櫂が選別して山にした紙を受け取り…迷宮の前の扉に走る。


『告知します。解答用紙は扉の前のポストに入れて下さい、イヌ。入れれば扉の向こうで査定が始まります』


俺のiPhoneニノがしゃべり出す。

今まで櫂のiPhoneと話していたが…俺のもしゃべるらしい。


「どのニノも、『イヌ』扱い…」

『お答えします、イヌ。外が変わったから機能がリセットされるなどという、浅ましい甘い夢は捨てて下さい。私は真実だけを述べるようにプログラムされています。ですのでどの私も、櫂様は櫂様、イヌはイヌ、サルはサルです』


………。

何だか面白くねえ俺は、軽い舌打ちしながら目的物に辿り着く。


「これか?」


葉っぱでアーチ状になった屋根が見えれば、その下には…古城に出て来そうな古めかしい大きな鉄製のドア。

その前に堂々と居座る、赤い郵便ポスト。


何処をどう見ても、珍しくもねえ赤い角張った郵便ポスト。

だけど此処には明らかにミスマッチな、違和感あるポスト。


『解答を入れてニャー』


更にはおかしな紙まで貼られている。
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