シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「………何で、"ニャー"?」
思い切り不審に思いながらも、指示通りそれに投函すると、突然音楽が流れた。
♪郵便屋さん、お入んなさい。
手紙が10枚落ちました。
拾ってあげましょ
1枚 2枚 3枚 4枚 5枚
6枚 7枚 8枚 9枚 10枚
ありがとう
………。
「これ…長縄跳びだったよな…」
聞き覚えある旋律に、ぼんやりと小学校の頃を思い出した俺。
その頃、緋狭姉に鍛えられていた俺は、高速縄跳びをさせられていた。
緋狭姉が片腕で縄の端を持ち、反対端を木に括り付け、その縄の数5本…凄まじい早さでぶんぶん回していて。
縄に不規則につけられているのは針と釘。
超高速に動く縄にあたらねえよう、とにかく俺は必死で縄を跳んでいた。
そういう恐ろしいモンだと思ってたんだ、縄跳びは。
だけど小学校の体育の授業で、縄跳びが皆で合唱する…あんなほのぼの系な歌に合わせて飛び跳ねるものだと知り、ぶったまげたっけ。
――は!!? あんた…あたし抜きにして、緋狭姉とどんな縄跳びしてたのよ!!?
その頃芹霞は、俺の修業の意味がよく判っていなくて、俺だけが緋狭姉と遊んでいると思っていたらしく、
――3人家族なのに、何であたしだけ仲間外れにするの!!? 入れてくれたっていいじゃない!!! 馬鹿ッッッ!!!
ほっぺにばっちーんだ。
その後、修業内容のごく一部を知るようになってからは、
――いーのいーの。緋狭姉と遊んでおいで~? あたしはあたしで遊ぶから。櫂んとこ行ってこようっと。
俺を見捨てて、積極的に逃げ回っていた女だ。
――ワンコ様がいなかったらあたしはきっと生きていません。人身御供、いつもご苦労様です。
そういって真夜中差し入られる賄賂(スイーツ)。
――体脂肪率が下がらないのは何故だ。今日から基礎鍛錬倍!!!
俺、絶対…今まで生きてきた人生の半分、神崎姉妹に振り回されていると思う。
そんなことを思い出していた時、縄跳びの歌が終わった。
同時に、扉の覗き窓のような処から、一枚の紙が出て来た。
………。
おい、今…中からこれ手渡したの…何だ?
白いふさふさの手が見えたよな。
肉球…見えたよな?
そして渡された紙には。
『49問全正解!!!
ニャアニャア』
下手くその字。
そして最後に…
「猫の…手形?」
もしかして…久遠ニャンコ、たらい回しにされているんだろうか。
「ニャアニャアって…なんだ?」
感情表現が伝わってこねえけど。
がちゃり。
鍵が外されたような音がした。
入れと言うことなのだろう。